「人口減少時代」とは、時代を支えた文明が行き詰まった時代だった
地方の首長はどう考えるのか
では、人口減少と向き合う地方の首長はどのように考え、この時代を舵取りしていこうとしているのでしょうか ── 。滋賀県・三日月大造知事、広島県・湯崎英彦知事、静岡県・川勝平太知事、大阪府・松井一郎知事、神奈川県・黒岩祐治知事の5知事にインタビューを実施したところ、共通する課題などがみえてきました。 一つは、現在進行中の少子化と今後さらに拡大する超高齢社会への取り組みです。 三日月知事は「長期的には、人口急増時代に失ったもの、住む空間の狭さや人と自然との関わりなど、これまで我慢してきたものを取り戻す施策を進めたい」。黒岩知事は、少子化には国家戦略特区を生かした「地域限定保育士」を打ち出し、超高齢社会には世界で最も早い進行という現状に応じた独自モデルを構築することでそのモデルを「世界に発信する」と主張。 ほかの知事も人口減少を機に、新たな価値の創造や社会システムと地域モデルのデザインにつなげたい意思を示す一方、そのためには、地方経済をいかに縮小させず維持するのか、出生率上昇につながる子育てしやすい社会を実現するのか、増え続ける高齢者の社会保障はどうするのか、といった喫緊の課題が山積し、苦慮している様子がうかがえました。 またもう一つ、知事たちが取り組みで強調したことが、人口流出を防ぎ、都会へ進学・就職した若者のUターンや他地域から移住を促進することでした。中でも、人口が流出する大きな要因として、批判が相次いだのは「東京一極集中」です。 川勝知事は、現状の人口流出の要因について、若い世代は“憧れ”による東京へ転出することと、東日本大震災後には海辺のまちから内陸への移転が増加した、といった心理面の影響を指摘し、対策として切れ目ない多様な情報発信で「ポスト東京時代」を創る、と意欲を示しました。 国と地方のあり方を変える必要性も指摘されました。湯崎知事は、日本が「世界のフロントランナー」を維持し続けるために、東京一極集中から、地域に人や会社を分散し、国内で多様化を図ることが「国の構造として非常に重要」と訴え、地方に自主性を持たせ、分権を推進することや広域連携重視の考えを示しました。 松井知事も同じく、社会保障費が増える中でも日本経済を成長させていくため、大阪を東京と並ぶもうひとつの極となる「副首都のようなポジション」にしたいとし、国に対しては「道州制に向けた憲法改正をすべき」と要望しました。しかし、現在の中央集権や地方自治の制度を変えるには「すさまじいエネルギーが必要」とも述べています。 各知事が挙げた「東京一極集中」「少子化」「人口移動」、そして人口減少時代に即した「新しい社会構造」……。これらの課題をさらに考えるため、連載「人口減少時代」では新たに、地域人口学が専門の福井県立大地域経済研究所特命講師、丸山洋平氏が人口移動や家族の姿の変化から日本の人口を捉えるための視点を執筆していきます。 そして、現在の人口減少期を、次の人口増加・経済成長の好循環が再び始まるための「重要なインキュベーターの時代」(鬼頭氏)ととらえるならば、果たしてその準備はすでに始まっているのか、また次の文明システムとは一体何なのか ── 、探っていく予定です。