2023年最大の匿流・「ルフィ広域強盗事件」、3年前から追っていたフィリピンのグループを警視庁はどう追いつめたか
強制送還を逃れるため自らを刑事事件を偽装
そして、2021年夏以降、一連の広域強盗事件が日本各地で起き始める。東京でも22年10月20日、稲城市の住宅で現金約3500万円や金塊が奪われ住人がけがをする強盗致傷事件が発生、警視庁捜査1課は強盗犯捜査係を投入し捜査を開始した。ほどなくして、渡辺被告らのグループの特殊詐欺について捜査を継続していた捜査2課から重要な情報がもたらされることになる。 フィリピンの入管当局によると、渡辺被告らは日本への強制送還を逃れるため自らを加害者とする刑事事件を弁護士にでっち上げさせ、2021年からマニラのビクタン収容所に収容されていた。捜査2課は、渡辺、今村被告と同時期にこの施設に収容され22年末ごろ日本へ強制送還された男に捜査員を接触させ、協力者としてさまざまな情報を入手していた。 2023年1月に入ると、稲城市の事件で捜査1課の強盗犯捜査係は防犯カメラの「リレー捜査」などで実行犯を割り出し、同月中に10人ぐらいを逮捕する。このうち一部は別の強盗事件への関与が疑われたり、すでに起訴されたりしていた。容疑者らのスマートフォンの解析の結果、「ルフィ」「ミツハシ」「キム」「シュガー」を名乗る指示役が通信アプリ、テレグラムを通じ指示を出していたことが分かった。ルフィの電話の国番号は、フィリピンに割り当てられている「63」だった。 さらに10人のうち1人が「ルフィと話したことがある。ルフィは日本で逮捕状が出ているので帰れない。フィリピンの収容所にいる」と供述。強盗犯捜査係が、供述に登場するルフィに該当するような容疑者がいないか確認したところ、捜査2課から「今村磨人ではないか」という情報が入ったという。 捜査2課が今村被告や渡辺被告と同時期にビクタン収容所に入っていた男を協力者としていることを知った強盗犯捜査係は、2課を通して男から事情聴取。男は稲城市の事件の発生時、今村被告と同室で、そこに渡辺被告も入ってきて日本の実行犯に指示を出しているのをそばで全部聞いていたという。男は事件について表に出ていない事実を詳しく知っていることも判明。渡辺被告らが特殊詐欺だけではなく、強盗にも手口を広げて暗躍していることは明らかだった。 続きは<【ルフィ広域強盗事件】「シュガー」渡辺被告のiPhoneロックを解除! アップルでも解除できないロックをハイテク班はいかにして解いたか>で公開中です。
甲斐 竜一朗(共同通信編集委員)