馬毛島基地整備、地元議会は「蚊帳の外」? 防衛省の情報提供先はいつも行政 「地元の理解」強調しながら、地域代表自負する議会の定番スルーにくすぶる不満
鹿児島県西之表市馬毛島の自衛隊基地整備は、工期が3年遅れの2030年3月末に延長された。住民生活や地場産業への影響が長期化しかねない中、防衛省の一連の対応に地元では不信感が渦巻く。新たな工程の説明は市長にとどまり、かねて直接の情報提供を求めていた市議会や市民は蚊帳の外に置かれた格好だからだ。同省が着工前、再三強調してきた「地元の理解」のあり方が改めて問われている。 【写真】馬毛島の自衛隊施設整備の工程
10日午前、同省の原田道明九州協力調整官が八板俊輔市長を訪ね、工期延長について報告した。折しも市議会は定例会の会期中。この日は常任委員会が予定され、市議の約半数が市役所にいた。中種子、南種子両町も回った原田氏は取材に「何も答えられない」の一点張り。議会や市民への説明に触れず、足早に最後の南種子町役場を後にした。 ■届かぬ声 基地整備を巡り、市議会は21年9月に賛成派市民の請願を受け、国に「速やかな説明」を求める意見書を可決した。馬毛島対策特別委員会でも直接説明を繰り返し要望したが、実現したのは3回だけ。種子島への関連施設配備案が示された21年12月、隊員宿舎候補地の説明があった22年7月、馬毛島に3000室以上の仮設宿舎を設置するとした23年2月が最後だ。 川村孝則議長は「市長と同じく市民の負託を受けた地域の代表だ」ともどかしさを募らせる。市議は来年2月で任期満了だけに「議員はそれぞれ現状把握したい思いがあり、国への要望も持っているだろう」。
工期延長について、市担当課が25日の特別委で防衛省説明を報告する。議会側からすれば“また聞き”にすぎず、疑問点は市を通じてぶつけるしかないのが実情だ。時間がかかる上に回答を得られる保証もない。 「防衛省はなしのつぶてで、市民の理解といっても情報がない。議会全体で考えるべき問題だ」と杉為昭委員長。定番となった国の“議会スルー”をどう受け止め、行動を起こすか。各議員の見識や判断が焦点になる。 ■情報不足 基地整備が本格着工して1年8カ月。最大6000人規模とされた工事関係者のピークはいまだ見えない。昨年5月に推移見込みが公表されたものの、当初1年後だったピーク時期は優に過ぎ、今年6月28日時点で約3680人にとどまる。 関係者の間では「作業員は多くても4500人弱」というのが共通認識だ。ピークは来年10月から1年程度とみられ、飛行場施設の運営開始時期は28年3月ごろが見込まれるという。
ただ、市は新たな見通しを防衛省から示されておらず、不透明な進め方が市民の不安をあおる要因にもなっている。同省は「(工期延長を公表した)今回はスピードを重視した。地元の要望を踏まえ、丁寧に説明したい」としている。
南日本新聞 | 鹿児島