長崎の「被爆体験者」救済、来月から拡充 被爆者と医療費助成を同等に
国の指定地域外で長崎原爆に遭い、被爆者と認められていない「被爆体験者」救済に向け、国が実施方針を示していた被爆者と同等の医療費助成について、事業委託を受ける県と長崎市は12月1日から申請受け付けを始める。国が実施要綱をまとめ、11月1日、県と長崎市などに通知した。 体験者への助成はこれまで、被爆体験に起因する精神疾患と合併症、7種類のがんに限られていた。厚生労働省などによると、従来の精神疾患や精神科受診などの要件を撤廃した上で、がんや糖尿病、白内障などを含む11種類の疾病に助成対象を拡充する。原爆投下時に胎児だった体験者も含める。 一方、放射線に起因する疾病に罹患(りかん)していることなどを条件に被爆者に支給される各種手当は、対象外のままとした。体験者は県内外に約6300人(3月末時点)おり、県と市は11月中旬以降、県内の対象者に事業内容を通知する方針。 県と市に被爆者健康手帳の交付を求めた訴訟の原告団長で第2次全国被爆体験者協議会の岩永千代子会長(88)は「(助成拡充に)努力してくれたことは感謝したいが、あくまで求めているのは被爆者認定。むなしい気持ちはある」と複雑な思いを語った。 体験者救済を巡っては9月、岸田文雄首相(当時)が被爆者とは認定せず、医療費助成を拡充する事業を年内のできるだけ早い時期に始めると発表。国と県市が開始時期などの調整を進めていた。