【解説】第2次トランプ政権と米中貿易摩擦の行方 1期目以上に大胆な対中国関税措置発動も…中国は自由貿易に対する脅威と訴える構えか
米国大統領選挙の結果、共和党候補のトランプ氏が勝利した。 【画像】政権2期目はさらに大胆な対中関税措置を発動するとみられるトランプ氏に対し習近平氏は…
トランプ氏圧勝「バイデン氏撤退もっと早くしていれば」
それまでの世論調査では、トランプ氏とハリス氏の支持率が拮抗し、稀に見る大接戦とになると予測されてきたが、トランプ氏は獲得した選挙人でハリス氏を90人近く上回り、議会の上院下院でも共和党が過半数を握り、結果だけを見ればトランプ氏のための大統領選挙だったと言えよう。 言い換えれば、これはバイデン政権の4年間に対する国民のジャッジとも表現でき、大敗を喫した民主党陣営からは、バイデン大統領が選挙戦からの撤退をもっと早くしていればとの不満の声も聞かれる。
トランプ外交すでに開始…対中強硬派相次ぎ起用
トランプ氏の勝利宣言後、諸外国の首脳は次々に勝利を祝福するメッセージを送ったが、トランプ政権の発足は2025年1月であるものの、すでに各国の間でトランプ外交は始まっている。トランプ氏も政権人事に着手し、外交・安全保障分野の要職には対中強硬派を相次いて起用するようだ。 安全保障担当の大統領補佐官にはマイク・ウォルツ下院議員が起用され、ウォルツ氏は陸軍特殊部隊の出身で、下院では中国批判の急先鋒として知られる。 国務長官にはマルコ・ルビオ上院議員を起用するとされる。ルビオ氏も対中強硬派の急先鋒で、中国・新疆ウイグル自治区における強制労働や監視などの人権問題を強く非難し、中国による軍事的脅威に直面する台湾を軍事的に支援する必要性を訴える。 こういった要職人事からみても、第2次トランプ政権が対中強硬姿勢に徹することは明らかだろう。
政権1期目は貿易摩擦激化…2期目はさらに大胆な対中関税措置発動か
トランプ氏は政権1期目の際、米国の対中貿易赤字を是正する手段として、2018年から4回にわたって計3700億ドル相当の中国製品に最大25%の関税を課す制裁措置を次々に打ち出し、それによって中国も報復関税で対応し、米中の間では貿易摩擦が激化していったことは記憶に新しい。 しかし、トランプ氏は今回の選挙戦の最中から中国製品に対する関税を60%に引き上げ、中国車を念頭にメキシコから入ってくる輸入車に対して200%の関税を掛けるなどと主張しており、再選リスクがなくトリプルレッドという状況も影響し、政権2期目は1期目以上に大胆な対中関税措置が発動されることが予想される。 そして、バイデン政権がこの4年間発動してきたあらゆる対中貿易規制も継承すると考えられる。 バイデン政権は中国・新疆ウイグル自治区の人権問題を強く非難し、2022年7月には同自治区の強制労働によって製造された品々などの米国への流入を禁止するウイグル強制労働防止法が施行され、2022年10月には中国による先端半導体の軍事転用を防止する観点から、先端半導体そのものの獲得、製造に必要な材料や技術、専門家の流出などを防止する輸出規制を強化した。 また、バイデン政権は先端半導体分野における中国向けの輸出規制で同盟国にも同調を呼び掛けた。2023年1月には、先端半導体の製造装置で高い技術力を誇る日本とオランダに足並みを揃えるよう求め、日本は2023年7月、14ナノメートル幅以下の先端半導体に必要な製造装置など23品目を輸出管理の規制対象に加えた。 第2次トランプ政権の政策方針では不透明な部分もあるが、経済や雇用、先端技術などあらゆる分野で米国の対中優位性を確保するという目的ではバイデン氏とトランプ氏も変わらないことから、第2次トランプ政権も必要に応じて先端技術分野における対中貿易規制を強化し、必要に応じて同盟国にも協力を求めるだろう。