【解説】第2次トランプ政権と米中貿易摩擦の行方 1期目以上に大胆な対中国関税措置発動も…中国は自由貿易に対する脅威と訴える構えか
習近平氏は開かれた世界経済構築する必要性訴え…トランプ氏念頭か
しかし、バイデン政権と違い、懲罰的な圧力という観点で要請してくることも考えられる。 バイデン政権は台湾を民主主義と権威主義の戦いの最前線と位置付け、台湾への軍事支援を積極的に進めてきた一方、トランプ氏は台湾は米国から半導体産業を奪ったなどと主張しており、台湾問題をバイデン政権ほど重視しない可能性があるが、その分、米中の間では安全保障ではなく、経済や貿易の領域がこれまで以上に主戦場となるだろう。 これに対して、中国はどう対応していくのだろうか。無論、米国がトランプ関税を次々に打ち出せば、中国もそれに応じて報復関税で対応することが予想されるが、以前の米中貿易摩擦とは違い、今回はより冷静さを保つことに努めるだろう。 習近平氏は11月にブラジルで開催されたG20の首脳会議で、中国がグローバルサウスのパートナーであり、多国間主義と国連を中心とする国際システムを堅持するという姿勢を示し、単独主義と保護主義に反対し、開かれた世界経済を構築する必要性を訴えた。これは保護主義的な姿勢を鮮明にするトランプ氏を念頭においた発言と考えられる。 バイデン政権の4年間では、経済的威圧、鉄鋼やEVなどの過剰生産などで中国を懸念する動きが欧米陣営で広がり、バイデン政権は経済安全保障の観点から同盟国・友好国とともに多国間協力を強化した。
多国間協力の動き後退…中国は楔打ち込むチャンス
しかし、トランプ再来となればそういった多国間協力の動きは後退することになろうが、中国にとっては米国と欧州、米国と日本の間に楔を打ち込むチャンスとなる。 バイデン政権も経済や貿易の領域で中国に対して強硬な姿勢に徹してきたが、欧州やオーストラリアなどの対中姿勢は米国とは異なる。 中国としては、第2次トランプ政権の単独主義、保護主義を自由貿易に対する脅威とテクニカルに訴えることで、自らに有利な国際秩序となるよう尽力することだろう。 【執筆:株式会社Strategic Intelligence代表取締役社長CEO 和田大樹】
和田大樹