いまだ本塁打ゼロの横浜DeNA筒香もWBC後遺症なのか?
横浜DeNAの4番打者、筒香嘉智(25)に開幕10試合目にしてホームランが出ない。打点はわずか1。12日の阪神戦では、ポン、ポンと軽打で2本のヒットを打ったが、走者を置いた肝心の2度の好機に凡退を繰り返して乱打戦に持ち込みながらブレーキになった。4番が打たねば打線に本当の爆発力が生まれない。 最初のチャンスは、ロペスの犠飛で3点差に迫った7回二死一、二塁。左腕の高橋に対して、初球のインハイのストレートを果敢に打ちにいったが、振り遅れてファウル。結局、フルカウントからレフトフライに終わったが、インサイドのストレートに体が開いてしまっていた。9回にも絶好の舞台が巡ってきた。 今度も3番のロペスがセンター前ヒットで6-8と2点差にして、なお二死一、二塁からドリスが筒香の初球に暴投。走者が二、三塁に進んで一塁が空いたが、逆転の走者を出したくなかったのか、それとも筒香の不振を見抜いたのか、阪神バッテリーは勝負を挑んできた。 2球目に高めに甘く浮いたストレートが来たが、これもファウル。仕留め切れない。追い込まれて最後はフォークにバットが空を切ってゲームセット。「得点圏で打てなかった」。筒香は敗戦の責任を背負った。 10試合で打率は.250、1打点、本塁打ナシ。去年は開幕3試合目の広島戦で一発目が出て、3、4月で8本打った。2年前も、開幕の巨人戦で本塁打。第2戦でも3ランを放つなど、3、4月で6本。3年前は初本塁打が10試合目で、この年もそこまでわずか1打点とスタートに苦しんだが、シーズン22本で、まだブレイクする前の話である。 凡退の内容を見るとボールと衝突気味だ。ボールを空中で一瞬、止めてしまうような筒香の“間”がない。日の丸を背負った極度の緊張感の中でプレーを続け、アメリカでは動くボールへの対策を余儀なくされた“WBC後遺症”とも考えられなくもないが、ラミレス監督はそれほど悲観はしていない。 「野球なんだからこういうことはある。私はもっと打てない時期があった。もうすぐ目が覚めるよ」 試合前にはバッティング練習中に筒香に話かけて、「ストライクをしっかりと振ってくれ。いい投球を見逃さず、それをしっかり打ってくれ」と、アドバイスを送った。 「ポン、ポンとヒットが出るよりも、1本、ホームランが出ればガラっと変わるから」 ラミレス監督は、そう我慢強く4番打者の復調を待っている。 WBC経験者の評論家、里崎智也氏も、「ヒットが2本出ているし、タイミングの合っていないボールもあるが、最後のフォークにしても、なかなか見極めることの難しいボールだった。そこまで重症の印象はない。チームのブレーキになったことが話題になるほど大きな存在の4番打者になっているということ。それに、そもそもWBC後遺症というものは存在しない。実際、2009年には、マー君が24勝して、バレンティンが最多本塁打の記録を作っている」と、ラミレス監督と同じ意見。 筒香自身も「感覚はだいぶよくなっている」とも言う。 確かに打てずに叩かれるのは、真の4番打者と周囲が認めている証拠に他ならない。それらのプレッシャーを飲み込んで結果に変えるとき、筒香は、さらにもうひと皮剥けた大打者へと変貌を遂げるのだろう。