グーグル、マイクロソフト、アマゾンがこぞって「原発プロジェクト」に投資する理由
AIの開発競争が激化するなか、データセンターにおける電力需要が急増している。そこでマイクロソフト、グーグル、アマゾンが目をつけたのが原子力エネルギーだ。米テクノロジー大手は原発プロジェクトへの投資でもしのぎを削っている。 【画像】グーグル、マイクロソフト、アマゾンがこぞって「原発プロジェクト」に投資する理由
風力や太陽光発電より安定供給
テクノロジー企業の間で、AIなどの稼働に必要な「ゼロエミッション電力」の供給源として、原子力発電への関心が高まっている。 最近、マイクロソフトやグーグル、アマゾンが相次いで原子力発電事業者と契約を結んだ。企業向けにコンピューティングサービスを提供するデータセンターでの電力需要急増に対応するためだ。 電力需要の高まりの背景には、そうしたテクノロジー企業のAIに対する大規模な投資がある。AIは、ソーシャルメディアやビデオストリーミング、ウェブ検索などの従来技術と比べて、電力消費量がはるかに多いのだ。 マイクロソフトは9月、閉鎖中のスリーマイル島原子力発電所を再稼働させて電力供給を受ける契約を、電力大手コンステレーション・エナジーと結んだ。10月には、アマゾンとグーグルが次世代の原子力発電「小型モジュール炉(SMR)」の開発に投資することが明らかになった。 SMRはまだ商業化には至っていないが、エネルギーの専門家らによれば、米国で1950年代以降建設された大型原子炉よりも建設コストが安く、建設自体も容易だという。 かつては風力や太陽光などの再生可能エネルギーに巨額を投資していたテクノロジー大手が、原子力に関心を向けるようになったのは、温室効果ガスを排出せずに、安定的に確保できる電力を求めているからだ。風力や太陽光は気候変動を促すことはないが、電力の常時供給にはバッテリーなどの蓄電システムの導入が必要になる。 マイクロソフト、アマゾン、グーグルは2030年までに全事業で排出される温室効果ガスの排出量をゼロにすることを目指している。だが、この目標を打ち出したのは、AIブームの到来以前だった。 「テクノロジー企業はビジネスを持続可能な方法で成長させたいと考えていて、現時点でのその最適解が原子力なのです」と、格付け会社S&Pグローバル・レーティングのマネージングディレクターを務めるアニーシュ・プラブは言う。 グーグルは10月14日に、SMRの開発を手がけるスタートアップ企業カイロスパワーと電力の購入契約を締結したと発表した。最初のSMRは2030年までに稼働開始予定だいう。 16日にはアマゾンが、別のスタートアップ企業XエナジーのSMR開発に投資することを発表した。 プラブによれば、SMRの建設コストは1基あたり約10億ドルで、ゆくゆくはデータセンターの隣に設置可能になるという。
Ivan Penn and Karen Weise