【今月見るべき新作映画】大人の涙腺もゆるむ『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』
発見、感動、思索……知的好奇心を刺激する、映画好きな大人のための今月の新作を厳選! 【写真】今月見るべき新作映画
『サイドウェイ』の名匠と俳優コンビが再タッグ!孤独なクリスマスに心が触れ合う『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』
『サイドウェイ』(2004年)の監督アレクサンダー・ペインと、名優ポール・ジアマッティのコンビで再び今年のアカデミー賞を沸かせた話題作。 舞台は1970年代。ボストン近郊の名門寄宿学校で古代史を教える教師ハナムは、堅物の嫌われ者。そんな彼が、クリスマスに家族のもとへ帰れない子供たちの指導教官を命じられる。 「再婚相手と2人きりにして」と、母からカリブ海旅行の同行を断られたアンガスのほか、韓国からの留学生や宗教活動で両親不在の下級生など、総勢5人がハナムのもとに。ところがアンガス以外の学生は、父親がヘリコプターで迎えにきた金持ちの生徒に誘われてスキー・バカンスに行ってしまい、親と連絡が取れないアンガスひとりだけが残される。 家族が集うクリスマス休暇に独りぼっちのハナムとアンガス、そして食堂の料理長メアリーが、寒々しい学校に“ホールドオーバー(残留)”することに。 天涯孤独で、甘やかされた金持ち学生たちに反感を抱くハナム。大人びて反抗的な表情に家庭の問題や悩みを隠したアンガス。女手ひとつで育てた一人息子をベトナム戦争で亡くしたばかりのメアリー。愛想の悪い3人が他者の孤独を知り、心の傷に触れることで、少しずつ互いの距離を縮めてゆき……。
人はいくつになっても欠点や不満を抱え、平静を装った顔の下で怒ったり、葛藤したりしているが、人の痛みを知ることで見える景色が変わってゆく。監督アレクサンダー・ペインは、そんな厄介な心の機微を積み重ね、切なくもほろ苦い人間讃歌を紡ぐ名手だ。 名優ジアマッティ演じるラストの旅立ちに胸震わされるドラマの中、アンガス役の新星ドミニク・セッサ、そしてアカデミー賞助演女優賞に輝いたダヴァイン・ジョイ・ランドルフのアンサンブルも光る。 『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』 6月21日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー BY REIKO KUBO