復興への思いを形に……高校生が手作り3Dプリンターで小学生に出前授業
「ガラスの上に、細い材料を熱で溶かしながら作ります。材料はプラスチックの中でも硬いといわれるPLA樹脂です。200度に熱していますので、触らないよう気をつけてください」
PLA樹脂をチューブのように少しずつ押し出して薄い層を作り、積み重ねる。「うま助」バッジが約15分で完成した。 「もっと大きなものも、作ることができます」
◆ ◆ ◆ 出前授業は、山形県内の先進的な取り組みから派生して実現した。教育・産業界や行政機関の有志でものづくり連携を進める「やまがたメイカーズネットワーク」が、山形県内の高校に3Dプリンターの普及を進めてきた。「子どもに夢を与え、次世代を担う人材育成」を目指している。今回、隣県の復興支援として、手作り3Dプリンターの機材や運営ノウハウを小高工業に提供した。 福島県の浜通りは、教育分野でも大きな課題を抱える。小高は避難指示が解除されたが、若い世代の帰還は進んでおらず、地元高校の魅力づくりは喫緊の課題だ。また来年4月、同校は隣の小高商業と統合して「小高産業技術高校」に変わる。新学科を設置するなど「地域の核」となる期待が高まっている。
小高工業は、3Dプリンターを「アイデアを形にできるツール」と評価する。同高の鈴木秀勝教諭は「高校生自身が、自分で新しいものをいかに生み出すかを考えられる。また、これまで県内企業との連携が少なかったので、就職先など企業とつながる貴重な機会」と話す。 小学校以外にも、中学校の体験入学で紹介したり、地域の「こども科学祭」での展示を予定している。
◆ ◆ ◆ 最後に、小学生から高校生に質問があった。「将来何になりたいですか」。 「学んだ知識を生かして、市内の製造業で就職できるようがんばりたい」 「インターンシップで働きました。3Dプリンターの部品を作っている会社で働きたいです」
高校生がそれぞれ、将来の夢を語った。リーダーの山見祐希さん(17)は「3Dプリンターで義手を作ることに興味があります。もっと勉強して、いろんなものを作ってみたい」。 出前授業は、やまがたメイカーズネットワークの「手作り3Dプリンターでつなぐ“未来・絆”プロジェクト事業」の一環で、ヤフー基金の2015年度の助成事業として実施した。 (ヤフー社会貢献推進室 森禎行)