高校駅伝に農業高校が出場 あの金足農高も56年ぶり出場 22日開催
22日に京都市で開かれる全国高校駅伝競走大会に、農業高校が出場する。男子は75回目の開催で、秋田県立金足農業高校は56年ぶり、広島県立西条農業高校は9年ぶり。かつての代表として出場した先輩のエールを背に、都大路を駆ける。 【画像】 練習に励む西条農業高校の陸上競技部員(広島県東広島市で)
秋田・金足農業 失敗恐れず頑張って
金足農業高校は、1950年に開かれた第1回大会で準優勝した古豪。選手たちは、最後に出場した68年の同校の記録、2時間14分27秒を破ることを目標に、大一番に向けて調整を続ける。 チームをけん引するのは、環境土木科で土地改良や農地保全などを学ぶ3年生で主将の荻原太陽さん(18)。他の追随を許さないラストスパートが最大の武器で、3000メートル障害の東北王者だ。 荻原さんは「憧れの舞台に立てるのはうれしい。56年前より速く走り、笑顔でたすきリレーしたい」。応援する農家の思いも背負い都大路を駆け抜ける。 母校の半世紀ぶりの出場に熱視線を送るのは、秋田県男鹿市の近野清作さん(74)。56年前に都大路を走った一人だ。現在は野菜を栽培する傍ら、選手育成にも携わる。 思い出すのは、56年前に走り抜けた6区の記憶だ。「走破した5キロの沿道には、ずっと切れ目なく観客が並んでいた。あの壮観な景色は忘れられない」と当時を振り返る。 緊張で力みが出て本来の力を発揮できず、区間14位に沈んだが、たすきをつなぎ8位入賞に貢献した。出場選手には「失敗を恐れず、力の限り頑張ってほしい」と激励する。 都大路を経て、実業団の常磐炭鉱から東洋大学に入学。4年連続で箱根路を走った。都大路に挑む荻原さんは、箱根駅伝の常連・東海大学に進学する。「生きているうちにもう一度、金農OBが箱根路を走る姿をこの目に焼き付けたい」。都大路から箱根路へ。近野さんの夢は膨らむ。 (前田大介)
広島・西条農業 晴れ舞台楽しんで
西条農業高校は、1959年の第10回大会で初出場初優勝を果たした伝統校。部訓「継続は力なり」を掲げる陸上競技部で、男子長距離23人が農業実習や課題研究などの学業と陸上競技を両立する。地域や関係者、家族への感謝を胸に、部員一丸で憧れの都大路に挑む。 93年から3年続けて出場していたが、近年は全国最多優勝11回を誇る強豪の県立世羅高校などに阻まれていた。今年は11月の中国高校駅伝大会で2位になり、中国地区代表として9度目の出場を決めた。 部員は、園芸や生物工学、農業機械などの学科で実習や研究に励む。中国大会2区で日本人選手トップだった3年の曽我優皇さん(17)は、緑地土木科で測量や造園技術などを学ぶ。竹炭を利用してビオトープの水質改善の研究に汗を流す。 11月下旬の記録会では、メンバー10人中6人が5000メートルで自己記録を更新し、調子を上げる。駅伝主将の2年生、小池千勇さん(17)は「目標にしてきた舞台。支えてくれる人や地域への感謝の気持ちを持ち、力を出し切りたい」と意気込む。 卒業生や農業関係者らも声援を送る。同県三次市で梨や桃を約1・3ヘクタールで栽培する西田学さん(47)もその一人だ。在校時に3年連続で都大路に出場し、チームに貢献。大学卒業後は、実業団チームのNTT西日本(大阪府)でも活躍し、2010年にUターン就農した。 西田さんは「(西農で)仲間との絆、当たり前の事を継続する事の大切さを学んだ。農業高校や農高生の活躍は刺激になる。晴れ舞台を目いっぱい楽しんでほしい」と声援を送る。
日本農業新聞