政府の半導体支援、逐次投入から複数年にわたる大規模措置へ 民間投資呼び込みには課題も
政府が22日に閣議決定した経済対策には、最先端半導体の量産を目指すラピダスを念頭に半導体分野へ2030年度までに10兆円以上の公的支援を行う方針が盛り込まれた。従来の補助金の逐次投入から、複数年にわたる大規模な支援を手当てするよう手法を見直す形となる。政府が強固な支援姿勢を示し、今後10年間で50兆円を超える官民投資を誘発したい考えだが、一方で民間企業の懐疑的な見方もくすぶり続けている。 ■枠組み「計画的」に変更 「政府が一歩前に出た支援を行うことで、民間企業も大胆な投資を踏み切れるような環境をつくっていく」。武藤容治経済産業相は22日の閣議後会見で、経済対策の狙いを語った。 半導体は経済安全保障上の戦略物資として重要性が高まり、各国が国を挙げて巨額の支援競争を激化させている。日本は韓台などとの投資競争に敗れてシェアを落とした反省から、政府が大胆な投資支援を行う方針に転換。21年度以降の3年間で累計3・9兆円もの支援を決定している。 ただ、これらは毎年度の補正予算から充てており、財務省は「中期的な戦略に立った議論がなされていない」と場当たり的な対応を問題視する声も出ていた。 これに対し、今回の支援は7年間にわたる財政措置とし、初期段階は補助金を出し、量産化以降は政府機関を通じた出資や民間金融の融資に対する債務保証などに切り替える。計画的な枠組みにして、民間企業や金融機関が先行きの事業展望を見通しやすくした。 ■量産の道筋もまだ見えず 背景には、設立から間もなく、まだ実績のないラピダスに多額の支援をすることに対し、民間企業からの不安が根強いことがある。 ラピダスはトヨタ自動車など国内8社が73億円を出資して22年に設立。北海道千歳市に最先端半導体の工場を建設中で25年に試作を開始し、27年の量産を目指す。量産には計5兆円が必要とされ、政府支援以外に民間の協力も欠かせない。ラピダスは民間企業に資本増強を求め、既存株主8社の追加出資や、富士通やIBM、銀行などからの新規出資を取り付けた。 とはいえ、資金集めは順風満帆ではない。株主のソフトバンクの宮川潤一社長は8日の決算会見で「社内では追加出資はやめておけという声があり、ケンカになった」と打ち明けた。ラピダスは試作もこれからで量産の道筋も見えておらず、海外勢に対する競争力や販路など課題は山積みだ。政府の腰を据えた支援があったとしても事業の成功は見通せていない。
こうした中にあっても、民間の投融資を呼び込むためには、実績を一つずつ積み上げていくしか道はなさそうだ。「まずは試作ラインを成功させる。実際のモノをみてもらい、ユーザーに安心してもらうしかない」と自民党の半導体戦略推進議員連盟の議員は見解を示した。(万福博之)