金持ちに雇われた悪党を、容赦なく処刑する…映画『ロボコップ』で笑えるほど残虐描写が多い本当の理由
■「映画とガチンコの格闘をするんだ」 ショックを受けたマクティアナン監督は『ダイ・ハード』を任されたとき、カメラマンには『危険な愛』からずっとヴァーホーヴェンと組んできたヤン・デ・ボンを、編集には『ロボコップ』のユリオステを雇った。それ以来、ヴァーホーヴェン流のMTV風カメラワークとハイスパート編集はハリウッドのアクション映画の主流になっていく。 ディスコにロボコップが入る場面で、一瞬だけメガネの男が長髪を振り乱してジタバタ暴れるカットが入るが、それがヴァーホーヴェンだ。 「ヴァーホーヴェンは女房にするには問題がある」。ピーター・ウェラーは苦笑する。 「でも、つねに完璧以上を求める彼の情熱は本当に尊敬するよ。彼は映画とガチンコの格闘をするんだ。『たかが映画じゃないか』なんて気楽な態度じゃない。ヴァーホーヴェンは自分の中にあるヴィジョンを何が何でもフィルムに焼きつけようとする。命懸けでね。一緒に仕事をすると最初は『まともじゃない』と辟易(へきえき)するけど、僕はそうじゃないとわかった。彼はスタートからいきなりトップにギアをぶちこんで爆走するだけなんだ」 ■成人指定を避けるため、爆笑シーンをカット スピードだけではない。ヴァーホーヴェンはバイオレンスのギアもつねにトップだった。 オムニ社の副社長ディック・ジョーンズ(ロニー・コックス)は、死なないし給料もいらない警察官として、ロボットED209を開発する。その完成披露で、実演のため若いエグゼクティブが銃をEDに向ける。 「武器ヲ捨テナサイ。20秒以内ニ」 言われたとおりに銃を置いたのに、EDの20ミリ・バルカン砲は火を噴き、ヤンエグの体はズタズタに引き裂かれ、デトロイト市の模型の上に吹き飛ぶ。当初はこの後に、EDがさらに撃ち続け、弾丸に引き裂かれた死体がグロテスクなダンスを踊るショットがあった。 「試写ではここで爆笑になった。いいギャグだったのに」とヴァーホーヴェンは言うが、MPAA(アメリカの映倫)による成人指定を避けるため、カットせざるをえなかった。 EDの代わりにジョーンズのライバル、モートン(ミゲル・ファーラー)が提出した、殉職した警官の死体をサイボーグとして蘇らせる計画が採用される。「ロボコップ」だ。