福島県産米JA概算金大幅増 歓迎と購入価格上昇への懸念交錯
福島県内各JAからコメ農家への仮払金の目安となる「JA概算金」が決まった6日、県内では歓迎と購入価格上昇への懸念が交錯した。前年比の値上げ幅は過去30年で最大となった。稲作農家は「手塩にかけた栽培が報われる」と好意的に受け止めた。ただ、資材高騰の長期化などを背景に経費増への心配は消えない。一方、消費者や飲食業関係者からは、さまざまな食材の値上げが続く中、「(主食の)コメも値上げか」とため息が漏れた。 ■農家 来年作付けの励み 会津若松市河東町の農家真田良幸さん(67)の田んぼでは、稲穂が黄色に染まってきた。育てている主食用米品種の概算金がいずれも前年産より4千円以上の上乗せとなり、「予想していたような上がり幅で良かった」と胸をなで下ろした。 長男と従業員2人を含む4人でコシヒカリやひとめぼれ、県オリジナル品種「天のつぶ」などを26ヘクタール、飼料用を16ヘクタール栽培している。肥料代や燃料代などの経費は前年より2割ほど上がり、概算金の大幅アップは「来年の作付けの励みになる」と声を弾ませた。昨年に比べ夏場の高温の影響は少ないとみている。「今年の出来栄えは最高」と話し、週明けからの収穫を心待ちにする。
天栄村ブランド化推進協議会長を務める農家内山正勝さん(74)も「秋の収穫間近に明るい話題だ」と歓迎する。コシヒカリを中心に20ヘクタールを栽培している。必要経費は年々上昇しており、「農家は苦しい思いをしてきた。概算金が上がるのは妥当」と受け止めた。 ■消費者 家計に負担不可避 全国で起きている深刻なコメ不足は新米の出荷が本格化すれば緩和されるとされるが、概算金の上昇は一般市民が手にするコメの値上がりに直結する。 福島市の主婦加藤千恵子さん(76)は6日、コメ不足に悩む埼玉県の次女に送ろうと、市内のJAふくしま未来の直売所で昨年産の県産米を買った。「価格は上がってもコメは日常生活に不可欠なので、今後も購入する」と話すが、家計への負担は不可避だ。 「大量に使う燃料費高騰を中心に、心配は消えない」。南相馬市小高区の農業法人紅梅夢ファーム社長の佐藤良一さん(70)は複雑な胸中を吐露する。