日英交戦の歴史忘れず友好関係を 天皇陛下あいさつ、にじむ未来志向
英ロンドン・バッキンガム宮殿で25日夜(日本時間26日未明)に開かれたチャールズ国王夫妻主催の晩さん会で天皇陛下が述べられたあいさつは、日英の戦争の歴史を踏まえながらも「今回の訪問を通じて両国の友好親善関係が次代を担う若者や子供たちに着実に引き継がれ、一層進化していく一助となれば」と未来志向がにじむものになった。 【写真まとめ】テムズバリアーを見学される天皇陛下 日本は第二次世界大戦で英国と交戦。英国人捕虜を東南アジア各地の収容所で使役し、多くの犠牲者を出した歴史がある。戦争の傷痕が色濃く残る1971年に訪英した昭和天皇は、晩さん会で戦争に触れることはなかった。 98年の上皇さまの訪英では、バッキンガム宮殿に向かう馬車列に背を向ける元捕虜や、日の丸を燃やして抗議する人がいた。上皇さまは晩さん会で「戦争により人々の受けた傷を思う時、深い心の痛みを覚えます」と率直に語り「こうしたことを心にとどめ、滞在の日々を過ごしたい」と述べた。 元捕虜の支援者によると、元捕虜の多くが亡くなった今も、一部の子孫は日本への憎しみを持ち続けている。ただ、今回のパレードで訪英に反対する人の姿は見られなかった。陛下は今回のあいさつで「両国には友好関係が損なわれた悲しむべき時期がありました」と述べ、戦争の惨禍を忘れない姿勢を示した。 上皇さまの訪英に同行した元侍従次長の佐藤正宏さんは「上皇さまのスピーチや真摯(しんし)な姿勢が、両国のわだかまりを解くターニングポイントになった」と指摘する。 今回の陛下のあいさつについて「戦争の事実や、日英相互の努力が実を結んで関係が強化されてきたことを踏まえ、次世代に引き継がれていくことを期待する未来志向の内容で、そうした時代を迎えたのだと感じた」と話した。 今回、陛下とチャールズ国王はいずれも環境問題など地球規模の課題解決に日英が協力して対処する必要性を強調した。宮内庁幹部は「日英が協力して世界に貢献していく方向性で、お二方のスピーチは共通していた」と語った。【高島博之】