手話言語条例、中国地方で広がる 広島は6市町で制定 2025年デフリンピックも弾み 9月23日は国際デー
23日は国連が定める手話言語の国際デー。手話を言語と位置付けて普及を図る条例を制定する動きが中国地方の自治体で相次いでいる。鳥取県が2013年に全国で初めてつくり、山口、岡山両県をはじめ、全107市町村のうち4割の44市町村が制定した。来年11月に初めて日本で開かれる聴覚障害者の国際スポーツ大会「デフリンピック」も追い風に、今後も制定の動きが広がりそうだ。 【画像】中国地方で手話言語条例を制定している自治体 手話言語条例は自治体によって条例名や内容に違いはあるものの、市民が手話を学ぶ機会を拡大する施策の推進などの条項がある。中国地方は鳥取(13年10月)、山口(19年10月)、岡山(22年3月)の3県が制定。全日本ろうあ連盟(東京)によると、今月5日時点で計38都道府県が制定済みだ。 中国地方の市町村では14年12月の山口県萩市が最も早く、17年から増え始めた。今年も同県柳井市など6市町が制定した。県別では、最多の岡山は全27市町村のうち早島町を除く26市町村。山口7市、広島6市町、島根4市町、鳥取1市と続く。 未制定の自治体も来年の「東京デフリンピック」を見据え、検討を加速させている。大会には70~80カ国・地域から約6千人の関係者の来日が予想される。 広島県は本年度、障害者団体や学識者たちによる検討会議の開催を予定する。県障害者支援課の畝本孝彦自立支援担当監は「デフリンピックで手話を広める機運が高まっている」としつつ、「関係者でさまざまな考え方がある。意見を十分にくみ取ることを最優先にする」と説明する。松江市なども制定に向けて準備を進める。 一方、島根県は「手話言語に関する法律の制定を国に求める」(丸山達也知事)という立場だ。県として現時点で制定の動きはないという。 手話教育の現状に詳しい群馬大の金澤貴之教授(教育学)は「条例はある方が良いが、各地の政治的状況、団体の動きや考え方によって事情は異なる。制定されているから良いとは一概に言えない」と指摘する。 ただ、当事者団体は条例化への思いが強い。広島市ろうあ協会(東区)は14年度から市議会などに要望書を提出。20年施行の市障害者差別解消推進条例には手話での情報提供や手話普及を図る内容が盛り込まれたが、協会メンバーは「不十分」とし、今月2日に市内であった会合でも市の担当者に手話言語条例の必要性を訴えた。 同協会の蔵本則彦会長は「手話は一般の人にあまり良い印象を持たれない時代があった。条例をきっかけに、あいさつや簡単なやりとりでいいので、買い物の時に手話で話しかけてくれる人が増えてほしい」と望む。
中国新聞社