トレーディングルームに響いた「ついに」の声、日銀が17年ぶり利上げ
(ブルームバーグ): 日本銀行が17年ぶりの利上げに踏み切った19日、世界中の金融機関のトレーディングルームで「ついにか」との声が響き渡った。
三菱UFJ信託銀行の東京オフィス17階にあるトレーディングルームから、オーストラリア・シドニーのビジネス街まで、世界中のトレーダーらはここ最近で最も注目を集めた日銀の決定に目を凝らしていた。
市場の観測通りに日銀が超金融緩和策の修正を発表すると、外国為替市場では円相場が下落し、円に弱気だったヘッジファンドの戦略が正しかったことが証明された。株式市場では不動産株が急騰し、マン・グループのジャパン・ファンドのように日銀決定会合に向けて不動産セクターを選好していたファンドは恩恵を受けた。
債券利回りは低下したが、弱気派にとっても心強い兆候があった。日銀の声明文の脚注に、日銀が今後国債を買い控える可能性を示唆する記述があった。
シンガポールのブルーエッジ・アドバイザーズでマーライオン・ファンドの運用に携わるカルビン・ヤオ氏は、「市場の反応は、大人になるまでサンタクロースに会うのをずっと待っていたようなものだ」と表現する。
ヤオ氏は、米ブラックロックやモルガン・スタンレーMUFG証券などと同様に、世界で最後まで残っていたマイナス金利政策が解除されてもなお緩和環境が続くことに賭け、会合に向けて円売りポジションを構築していた一人だ。
日銀は現代史で最も大胆な金融緩和政策を終了し、世界第3位の債券市場を長くゆがめてきた利回り操作を手放しつつ、声明文では「現時点の経済・物価見通しを前提にすれば、当面、緩和的な金融環境が継続する」と明記した。
三菱UFJ信託銀では発表後にトレーダーたちが一斉に動き出した。電話やモニターのビープ音が鳴り響き、スタッフは慌てて政策声明をプリントアウトし、トレーダーたちが日銀の言葉を解析できるよう配布した。
その中に、白いハンカチで額の汗を拭いながらメモを取る酒井基成氏(39)の姿があった。「わくわくする」と、FX・金融商品取引部チーフマネジャーの酒井氏。「米国など他の国が利下げをする中、日本だけが利上げをする。為替にどのように影響するか注目が集まっている」と言う。