バイデン政権が中国製EVの輸入関税引き上げを検討:米大統領選挙を控えて米中貿易対立激化が2024年世界経済のリスクに
米国大統領選挙と米中貿易対立が2024年世界経済のリスクに
EV材料で中国は世界生産の8割を占めており、米国の自動車メーカーもEVの製造で中国製の電池部品、重要鉱物に多く依存している。自動車メーカーがそれらの調達先を見直すことを促す狙いで、米国政府は中国製の電池部品、重要鉱物をEV購入者への税控除措置から外していくことを決めたのである。 しかし、サプライチェーンの再構築には時間がかかる。他方、米国政府が中国製EVに対して追加の輸入関税を課す場合には、中国政府が米国の自動車メーカーに対する中国製の電池部品、重要鉱物の輸出を制限する報復措置を講じる可能性があるのではないか。その場合には、米国のEV製造に大きな打撃となりかねない。 2023年には中国経済の減速が明らかになったが、2024年には、金融引き締め効果で米国経済の減速も生じ得る。そうした中、世界第1、第2の経済規模を持つ両国間で貿易面での対立が強まり、報復措置の応酬となれば、両国経済の減速リスクがより強まる可能性があるだろう。 米国では、共和、民主両党ともに中国強硬姿勢が強い中、2024年の大統領選挙を睨んで、バイデン政権が中国強硬姿勢をより強くアピールすることが予想される。それは、両国経済の減速リスクを高め、2024年の世界経済の大きなリスクの一つとなるだろう。 (参考資料) "Biden Administration Explores Raising Tariffs on Chinese EVs(米、中国製EVの関税引き上げ検討=関係筋)", Wall Street Journal, December 21, 2023 木内登英(野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト) --- この記事は、NRIウェブサイトの【木内登英のGlobal Economy & Policy Insight】(https://www.nri.com/jp/knowledge/blog)に掲載されたものです。
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