二階堂ふみが『Eye Love You』で受け取った“たくさんのギフト” 「想いは伝わるんだな」
パッケージはラブコメだけど、中身はヒューマンドラマ
――テオのストレートな愛情表現や、花岡(中川大志)の秘めた優しさに悶絶する視聴者が続出しましたが、現場ではいかがでしたか? 二階堂:ジョンヒョプさんとご一緒するシーンでは、その勢いに身を委ねたいみたいな気持ちがあって、それをすごく楽しませていただいているって感じでした(笑)。本当にジョンヒョプさんは私が本を読んでいるときには想像していなかったようなサプライズで毎回驚かせてくださる方で。ご一緒させていただきながら、演技の引き出しというか、アイデアのレパートリーが増えていく感覚がありましたね。第1話で「そこのキョロキョロしてるかわいい人!」って呼びかけるシーンも、ジョンヒョプさんだからこそだったな、と。そんな予定調和にならないエネルギッシュなテオくんの動きが、人と関わることを怖がっていた侑里をグッと引き寄せられたのではないかと思います。中川くんとも今回、ほぼはじめましてくらいの感覚に近かったんですが、長くキャリアを積まれているだけあって、すごく安定感のある方で頼もしいなと思いました。ドラマの中では侑里と花岡くんの関係性って、とてもポイントになるところで。短いシーンでも長い付き合いをどうやって説得力を持たせていくか、一緒にお話ししながらお芝居をしてくださいました。あの「後出しジャンケン」もいわゆる胸キュンシーンにしようというよりは、優しさを積み重ねていくことを大事にしている感じでしたね。「人と人がこうやってコミュニケーションを取れたらいいよね」と。テオくんとの「だるまさんがころんだ」のシーンもそうですけど、根本にあるのは侑里に対する思いやりとか優しさなんですよね。 ――ちなみに、二階堂さんはストレートな愛情表現はいかがですか? 二階堂:私は、ストレートでも秘めたタイプでも、なんでも大丈夫です(笑)。その人なりに大切に想ってくれていることがわかれば。なので、テオくんか花岡くんかと聞かれることがありますけど、この物語のなかでは断然お父さんの誠さん派ですね。ふふふ、一番忖度のない答えになってしまいました。でも、本当にすごくいいんですよ、志らくさんの演じられる誠さんが。人と接していると、つい正しさとかそういうものを提示しがちですけど、正しさだけが正解じゃない時があるっていうことを誠さんから感じるというか。そういう深い愛情からくる寄り添いっていうのが、あの父娘のシーンにあっていいなと思いました。誠さんとのシーンって、(杉本)哲太さん演じる教授から見ると、1人で話しているみたいな感じになっていると思うんですけど、個人的にはむしろ言葉に重きを置きがちだけど、見つめ合うだけで通じ合うみたいなコミュニケーションもある気がして。あの2人のシーンではそういうものが見えるものになるといいなっていうのも、ちょっと思っていたりします。視聴者の方のスタンスによって感情移入するキャラクターが分かれるようです。ストレートに表現できる人はテオくんの気持ちがわかるだろうし、なかなか人の心に踏み込めない人は侑里の気持ちがわかるだろうし、見守る優しさを知っている人は花岡くんにグッとくるんじゃないかなって。 ――二階堂さんは、どのキャラクターに感情移入されましたか? 二階堂:私はやっぱり侑里さんでしたね。今は、言葉を伝えるのが難しくなってきた時代だなと感じていて。SNSとかでもコミュニケーションの正解がわからなくなっているなって。そういうなかで、人と関わっていくことって「ちょっとめんどくさいかも」とか「辛いことかもな」っていうネガティブな感情がちょっとあるような気がしていていたんです。だから、侑里さんの「人と関わるのがちょっと怖いなと」か「何かを伝えるのってすごく勇気がいるな」みたいな感覚はすごくよくわかりましたし、クランクインしたころ監督に「侑里さんって今の私にすごく近いキャラクターなんです」って話をさせていただいたくらいだったんです。なので、侑里さんを演じることで、どこか私自身もリハビリになるような気がしていました。実際、この現場で「1人じゃないんだな」って感じることもできて、このご縁に感謝しています。 ――第7話では真尋(山下美月)さんとの友情も描かれましたね。 二階堂:侑里はテオくんとの恋愛は成就したけれどテレパスのことまでは自分から言えていないという点では、本当の意味で人との繋がりというか、ありのままの自分を知ってもらえるところまではいけなくて。そのなかで、真尋がお父さん以外で初めて自分を受け入れてくれる存在としていてくれたのは、すごくよかったですよね。私自身も山下さんに出会えて良かったと思っているところもリンクしているような気がします。本当に、彼女の存在は俳優部として一番心強かったですし。また1人、いい俳優部の仲間を見つけられたなって思っています。『Eye Love You』は、ラブコメディではあるんですけど、深いテーマがあって。人と人との関わりとか、それぞれが抱えているトラウマとか、ありのままの自分を受け入れてもらう勇気とか……。人と関わることで傷つく可能性もある、そんな怖さを乗り越えながら成長していく侑里さんに救われた部分も多くありました。