隆の勝 大の里撃破“たたき上げ”の意地 1敗死守「やっと力を発揮できるようになってきた」
「大相撲九州場所・11日目」(20日、福岡国際センター) 平幕隆の勝が、新大関大の里を押し出して1敗を守った。名古屋場所で優勝決定戦も経験した30歳がトップを快走。初めての賜杯へ、勢いが止まらない。大の里は4敗目。大関琴桜は小結若元春を、大関豊昇龍は関脇大栄翔をそれぞれ押し出し、1敗を堅守。2敗だった阿炎と尊富士がいずれも敗れたため、首位3人と後続は2差に広がった。 全身で浴びる大歓声が、今は心地いい。新大関との注目の一番は狙い通りの快勝。「声援がすごく大きかったし、より気合が入る」。ガッチリ首位をキープした隆の勝が、満足げに頬を緩めた。 立ち合いで左にズレると、右のど輪で大の里をのけ反らせた。さらにもろ差しとなって攻め続けて押し出し。相手の圧力と右差しを封じるため「とっさですね」という立ち合いの動きに、今場所で猛威をふるうのど輪がピタリとハマった。 中学から入門して15年目。少なくなった“たたき上げ”として活躍を続ける。学生相撲出身者への意識は今でこそないが、若い頃は「負けたくないのはあった。学生相撲の人が先に上がっていくので」と対抗心を持っていた。学生相撲出身のエリートで最速記録を塗り替えてきた新大関を、優勝争いの後半戦で見事に撃破。“たたき上げ”の意地を示してみせた。 これまで2度優勝争いを経験し、名古屋場所では優勝決定戦にも進んだ。自ら認める上がり症で、本場所になると力を出せなかった男が変身。母・雅代さんから「点だけを見ないで、周り全体を見るようにした方が緊張しない」と言われてきたアドバイスも、実践できるようになった。 「控えにいても、相手しか目に入らなかったのが、お客さんまで見える。実感として落ち着いている。お客さんのいる中でも、やっと力を発揮できるようになってきた」。成長を遂げた“おにぎり君”の目には、悲願の賜杯もハッキリと見えている。