2014年日本政治を読み解く4つのポイント /早稲田塾講師 坂東太郎のよくわかる時事用語
2014年は大きな選挙のない年で、安倍晋三政権を支える自民党が国会(衆議院と参議院)2院ともに多数を占めた中、かなり自由に政策を推進できるとみられています。「大きな選挙」の最たるものが議席を総入れ替えする衆議院選 で首相が解散権を行使しなければ14年にはありません。参議院は3年改選で14年はその「すき間」になります。都道府県知事や市町村長の多くを一斉に選ぶ「統一地方選挙」も大きな選挙でしょうが、これも15年の予定です。
(1)東京都知事選
と思っていたら13年末に東京都の猪瀬直樹都知事が金銭がらみのトラブルを追及されて辞職。ロシアのソチで開かれる冬季オリンピックが始まってまもなくの14年2月9日に「首都の顔」を選ぶ知事選が行われるハプニングへ至りました。順当にいけば、ここで選ばれた新知事が「最も強い」とされる再選 (4年後)も勝ち抜く可能性が高く「東京五輪の顔」をも事実上決めます。 今回の選挙は石原慎太郎氏が立候補しなければ新顔同士の戦いです。そこで大過なく任期を終えると2選目は「現職vs新顔」の構図となり、現職がしばしば落選する「多選」批判もなく、4年間で培った実績で勝負できるので都知事に限らず全国の首長選挙に「再選は強い」という顕著な傾向がみられるのです。 与党(自民・公明)はぜひ勝ちたいところでしょう。しかし党が公認した知事をずっと出していません。といってそれ以外の党が立てた候補が勝っている訳でもないのです。青島幸男、石原慎太郎、猪瀬直樹と続いた作家知事は政党の支持程度まで受けても無所属。したがって勝敗は与党が事実上推した方が勝つかどうか。敗北すると打撃は大きいはずですが、その時もなお「地方選には固有の要素がある」と言い逃れるでしょう。
(2)徳田氏問題と衆院補選
しかし国政選挙はそういきません。先に国会議員の選挙が14年にはないと言いました。しかし「補欠」を埋める選挙ならばあり得ます。現在、公職選挙法違反(買収)容疑で調べられている衆議院鹿児島2区選出の徳田毅議員(当選時は自民党公認)の辞職ないしは失職が必至という観測が強く、4月27日の補欠選挙が濃厚です。東京都知事選に立候補しようと衆議院小選挙区で当選した現職の国会議員 が辞職した場合(国会議員と知事は兼任できません) 、やはり同日補選がなされるでしょう。 問題はその時期です。4月1日から消費税が5%から8%に上がります。増税は一般に選挙民には不人気で与党候補が競ったり敗退すると、国民が政策に厳しい見方をしていると判断されます。国会議員を選ぶのだから「地方選固有の要素がある」とも言い難い。消費税増税は本来法案を可決成立させた野田佳彦(民主党)政権が問われる課題ながら、安倍首相が13年10月に自ら8%とするという「決定」の場面を作ったために政権の信認を問うという形になりました。 徳田毅議員が金銭スキャンダルで去った後というのもややこしい。自民党は後釜を見つけ出して是非とも勝たなければなりません。それでプラスマイナスゼロですから。実際にはスキャンダルの逆風と消費税増税のそれが合流してかなり厳しくなるでしょう。現在衆議院議員の小選挙区議席は295。たかが295分の1というなかれ。補選で与党が敗北して「風が変わった」というケースは過去に多く見出せます。おそらく各党の総力戦になるでしょう。その結果として一向に進まない野党の再結集や再編が進む場面もあり得そうです。