相手を生かすために、精一杯生きる…まひろと道長が再生→「宇治十帖」爆誕の流れに感嘆【光る君へ】
「宇治十帖」は言葉が「湧き出て」きた? 誕生の瞬間
さらにこの回で注目なのは「『源氏物語』宇治十帖がなぜ生まれたのか?」に、一つの回答のようなものを提示したことだ。光る君の子ども&孫世代の男女たちが、どこか神秘的な空気を感じさせる宇治の土地を舞台に、エロスとタナトスと仏教思想が交錯した人間模様を紡いでいく「宇治十帖」は、それ以前の物語とはタッチや雰囲気が異なることから、別人が書いた説(賢子の名前を上げる人も)も根強い。 しかし『光る君へ』では、まがうことなく紫式部本人が書いたということに。一旦はすべて終わったと考えていたけど、道長がきっかけで訪れた宇治の美しい風景、改めて生きる意味を考えた道長との語らい、そして「たとえこの世で結ばれなくても、強く相手を慕う」という思い。それらが劇的に重なって、まひろは一度は置いた筆を再び手に取った。第31回の『源氏物語』誕生のときは、まひろの上に大量の言葉が「降りて」きたが、今回は直前の場面でインサートされた泉のように、言葉が「湧き出て」きたのだろう。 ■「相手を生かすために精一杯生きる」2人の巻き返し そしてまひろの「道長様が生きておられれば、私も生きられます」という言葉に、思わず涙した道長くん(柄本の表情筋をじっくり捉えた映像が絶品!)。今までもまひろのとの会話で、たびたびパワーチャージしていたけど、この最高に生きるモチベーションとなる言葉は、強力なカンフル剤となったはず。SNSでも「二人の恋と人生が成就した」「先に死ぬなとか、あなたがいれば生きられるとか、究極の愛だな」「今までで一番泣いたかもしれん」など、2人が長い間積み上げてきた至高の関係性に涙したという声も上がっていた。 ここからまひろは、より「人とはなんでございましょうか」を探求した新しい物語を記し、道長は「もう長くはない」と言い放った清少納言(ファーストサマーウイカ)を笑い飛ばすかのように、三条天皇(木村達成)を帝位からおろし奉ることにまい進する。姥桜が満開の花を咲かせるかのような巻き返しを、ここから見せていく2人。その原動力がどちらも「相手を生かすために、精一杯生きる」というのが、ただただ胸熱でしかない。さぶまひ、どうか最終回までこの尊い関係を貫いて!!!! ◇ 『光る君へ』はNHK総合で毎週日曜・夜8時から、NHKBSは夕方6時から、BSP4Kでは昼12時15分からスタート。11月10日放送の第43回「輝きののちに」では、道長が三条天皇の譲位に向けて本格的に動いていく姿と、まひろの娘・賢子と若武者・双寿丸(伊藤健太郎)の関係に大きな変化が訪れるところが描かれる。 文/吉永美和子