「ただ平和がほしいだけ」 民族闘争のはざまで、口ずさむ絶望の歌
マクブレは歌詠みでもある。子供の頃から、今は亡き父親がよく歌ってくれ、それで自らも歌うようになった。 多くの市民が殺され、瓦礫と化したこの場所を訪れた時、思わず悲しみと絶望の歌が口をついて出た。 また市民が焼かれた/ ああ、私が目の見えない盲目ならばよかったのに/ 神よ、私はもう死んだのです 長年続く民族闘争のはざまで、愛する夫や息子、娘を失った母親たちは数えきれぬほど存在する。 「トルコ人もクルド人も共存できるはずなのに。どうして戦わなくてはならないのか? 私はただ平和が欲しいだけ」 マクレブの頬に一筋の涙が流れた。 (2016年6月撮影) ※この記事はTHE PAGEの写真家・高橋邦典氏による連載「フォト・ジャーナル<トルコ~クルド人の悲劇>」の一部を抜粋したものです。