熊本県、地下水保全へ「硝酸性窒素」を低減 基本計画を初策定 国の基準値より厳しい目標 【守る生かす熊本の水】
熊本県は地下水の汚染原因の一つとされる硝酸性窒素を減らす取り組みを本格的にスタートさせた。20年間の長期にわたる対策を盛り込んだ「基本計画」を初めて策定。国の水質基準値よりも厳しい目標を立て、市町村と連携して「熊本の宝の地下水」を守り続ける考えだ。 硝酸性窒素は農産物の肥料、家畜の排せつ物、生活排水が溶け残るなどして、土壌や水中に存在する。乳幼児が多量に摂取すると、酸素欠乏症に陥る可能性が指摘されている。 県は毎年、約300カ所で井戸の定点調査を実施。50~60カ所で、国の水質基準値(1リットル当たり10ミリグラム以下)を超える状況が続いている。県は改善に向け、さらに厳しい1リットル当たり5ミリグラム以下を指標に据えることを決めた。 基本計画が対象とするのは政令指定都市の熊本市を除く44市町村。5ミリグラムを超える硝酸性窒素が検出された井戸が二つ以上、半径500メートル内にあるといった場合には、その自治体を「取組推進市町村」に設定した。井戸のほか、水道水の水源についても解析。5ミリグラムを超えた水源があれば、取組推進市町村に加えた。
該当したのは、荒尾市、玉名市、山鹿市、菊池市、宇土市、阿蘇市、合志市、美里町、和水町、大津町、菊陽町の11市町だった。 県は初めて策定した基本計画(2024年4月から44年3月まで)に、この11市町は重点的な取り組みが必要だということを明記。27年3月までに、対策を盛り込んだ個別の計画を取りまとめるよう求めている。 県は各地の井戸の位置や水質といったデータに関する情報を提供し、11市町の計画策定を後押しする。環境保全課は「地下水は熊本の宝。おいしい水を守り続けていくためにも、連携して取り組む」としている。 熊本市は独自に硝酸性窒素の対策に取り組む。県内の残り33市町村に関しては、県は硝酸性窒素の増加の「予防」に力を入れるよう促す。 こうした取り組みを続けて、20年後には5ミリグラムが検出される自治体を4市町以下に減らすことも、県の基本計画には盛り込んでいる。(樋口琢郎)