実は5ナンバーサイスに収まってました! ドイツが生んだハチマル時代の大成功作クーペ
ハチマル時代にエアロダイナミックスの導入がブームだった中、大成功作をとなったオペル・カリブラ16V。最大の特徴は、空力優先のデザインを突き詰めたボディ。加えて広い座席空間、ラゲッジスペースを確保した、実用性でも優秀なクーペに仕立てられた。 【画像14枚】現在では省かれてしまったクルマが多いが、かつては灰皿も必須アイテムのひとつ。特にハチマル時代の欧州車では、コンソールのデザインに巧みなブレンドを見せる事例が多く見られた 【ハチマルユーロ 1994年式 オペル カリブラ 16V】 ドイツ製実用車らしい上質な普通さも体現 今回の取材のため、マニアックな品揃えで知られる神奈川の個性派ショップ「GATTHINA」から協力いただいたオペル・カリブラは、フォルクスワーゲンと袂を分かち、オペルの日本総代理店に鞍替えした直後のヤナセが輸入・販売した、96年式2L 16Vの4速AT版。前オーナーは新車として購入し、実に20年にわたって大切に愛用してきたという。その間にメンテナンスがしっかり施されていたせいもあるのだろうが、カリブラでは内装の質感からシュアな走りに至るまで、とにかくドイツ車らしいしっかり感に大きな感銘を受けた。 フロントに搭載され、前輪を駆動するDOHC16V「エコテック」ユニットは、高度なチューンを施されてケータハム・スーパーセブンにも採用されていた、なかなかの名機として知られている。もちろんカリブラでは、スタンダード版ゆえにおとなしいチューニングなのだが、それでもパワーに不足はまるで感じない。スポーツカー的な刺激には欠けるものの、ドイツ実用車らしい実直かつ健康的な排気音を伴いつつ、オートマチックとの相性もいいトルクフルなエンジンを歌わせて走るのは、なかなか気持ちがいい。 一方、スポーティーなスタイリングのわりには、ハンドリングも実用車然とした穏やかなもの。日本の5ナンバーサイズに収まる車幅で、湘南付近の狭い生活道路でも取り回しに苦労することはないのだが、その一方で高速クルージングでも現代車とまったく遜色のない走りっぷりや安定感を示し、さすがドイツ車と感心させられる。 そして極めつけは、圧倒的と言いたくなるほどの美しいプロポーション。4人の大人が快適に移動できる空間を確保しつつ、これだけ秀逸なスタイルが実現されたことは、日本車ならトヨタ・セリカ/カレン。欧州車ならVWシロッコ/コラードやクーペ・フィアット、プジョー406クーペなど、FF実用車ベースのクーペが群雄割拠のごとく人気を争ったハチマル時代にあって、カリブラが最も成功した最大の動機に違いないのである。 主要諸元 Specifications 1994年式 オペル カリブラ16V 全長×全幅×全高(mm) 4495×1690×1350 ホイールベース(mm) 2600 トレッド(mm) 1425/1445(前/後) 車両重量(kg) 1320 エンジン型式 X20型 エンジン種類 水冷直列4気筒DOHC 総排気量(cc) 1998 内径×行程(mm) 86.0×86.0 圧縮比 10.8:1 最高出力(ps/rpm) 135/5600 最大トルク(kg-m/rpm) 18.8/4000 サスペンション 前マクファーソンストラット 後セミトレーリングアーム ブレーキ 前後ともディスク タイヤサイズ 前後とも195/60VR15 新車時価格 278万円 初出:ハチマルヒーロー 2017年5月号 Vol.41 (記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)
Nosweb 編集部