年金の繰上げ受給で、年金額が最大24%減ることは、本当に損なのでしょうか?
国民年金・厚生年金の受給開始は原則65歳からですが、希望すれば60~75歳の間で、いつ受給するかを自分で決めることができます。特に、そのうちの「繰上げ受給」は、60~64歳間で受給を開始することができますが、繰り上げると最大24%も年金が減ります。 年金の繰上げ受給は本当に損なのか、解説していきます。
繰上げ受給の損益分岐点
繰上げ受給を行う際は、受給開始時期を1ヶ月早めるごとに0.4%ずつ(昭和37年4月1日以前生まれの場合、この減額率は0.5%)受給率が減り、60歳まで早めると受給率は76%(24%減額。昭和37年4月1日以前生まれであれば、最大30%減額)となります。 例えば、65歳で年金を1月当たり15万円(令和4年度における、厚生年金受給権者の平均受給月額である14万3973円から算定。なおこの金額には老齢基礎年金を含む)、年間180万円もらえる人の場合で考えてみましょう。 この人が受給開始日を最大限繰り上げて、60歳から年金を受給すると、年金額は24%減って月当たり11万4000円、年間で136万8000円を終身受給できます。65歳から受給する場合と比較すると、月当たり3万6000円、年間で43万2000円減になります。 なお、年金は一度受給を開始すると、その受給率が一生続きます。何歳まで生きるかで、年金の「損益分岐点」が変わってきます。 例えば、60歳まで繰り上げたときの損益分岐点は、80歳です。その年齢以上に生きれば、65歳から受給する場合より受給総額が少なくなるため、損になります。60歳~64歳に繰り上げた場合、それぞれの年齢別の受給率、受給額、損益分岐点がどのように変わるかは、図表1を参照してください(年金額は百の位で四捨五入しています)。 ちなみに「令和4年簡易生命表の概況」によれば、令和4年における60歳からの平均余命(60歳の人がその後何年生きられるかの目安)は、男性が約24年、女性が約29年です。60歳まで生きれば、男性は84歳、女性は89歳まで生きる可能性が高いということになります。その点から考えると、繰上げ受給は損といえます。 図表