年金の繰上げ受給で、年金額が最大24%減ることは、本当に損なのでしょうか?
日本年金機構「年金の繰上げ受給」より筆者作成
繰上げ受給のデメリット
続いて、繰上げ受給のデメリットも確認しましょう。 1.繰上げ受給の減額は生涯続きます。一度請求すると、取り消しすることができません。例えば、60歳時点で受給開始した場合、24%減らされた後の年金額がずっと続きます。 2.国民年金の任意加入ができなくなります。また、保険料の追納もできなくなります。このように未納期間を埋められなくなるため、年金額を増やすことができなくなってしまいます。 3.国民年金に加えて厚生年金も受け取れる場合、繰上げ受給の請求は、国民年金と厚生年金とで同時に行うことになります。 4.65歳になるまでの間、雇用保険の基本手当や高年齢雇用継続給付が支給される場合、厚生年金の一部または全部の年金額が支給停止となります。なお、国民年金は支給停止されません。 5.厚生年金に加入した場合など、給与や賞与の額に応じて、厚生年金の一部または全部が支給停止となる場合があります(在職老齢年金)。なお、繰上げ請求した国民年金は支給停止されません。 6.寡婦年金(自営業など国民年金の第1号被保険者として保険料を10年以上納付していて、10年以上の婚姻関係がある夫が亡くなった場合に、夫に生計を維持されていた妻が60~65歳まで受給できる年金)は、妻が自分の年金を繰上げ受給すると支給されません。また、寡婦年金を受給中の方は、寡婦年金の権利がなくなります。 7.国民年金を繰上げ受給したあとに所定の障害状態になっても、原則として障害基礎年金は受け取れません。障害基礎年金は原則65歳未満が対象ですが、繰上げ受給すると「65歳に達した」と見なされてしまうためです。
繰上げ受給した方がよい人とは
繰上げ受給をすると、一生涯の年金額が減ったり、国民年金の任意加入ができなくなったり、受け取れるはずの年金が受給できなくなったりします。よって、あまりおすすめできるものではありません。 しかし、働けない上に貯金もない場合は、基本的な生活を確保するために、繰上げ受給を検討しましょう。年金額は減ってしまいますが、生きていくためには収入の確保は欠かせません。 ちなみに、繰上げ受給を選択した人は、国民年金(基礎年金のみの人)については全受給権者の25.7%、厚生年金については0.7%となっています。