「あらゆる面で自分の未来を見失っていた」 相川七瀬さん「私が長いトンネルを抜け出たきっかけ」
歌手として本気でリスタートしようと思ったし、キャリアについての悩みや、母親である自分もありのまま受け入れて、最大限やれるだけのことをやろうとも決意しました。その軸をぶらさずに、使える時間やエネルギーを音楽に余すことなく使えばいいと思いました。すると、すごく楽になったんです。 ――人生のプライオリティが明確になった? あの時、やっと本当の意味で自分として生きていけるようになったし、一方では、等身大の自分として音楽に向き合えるようになりました。
それまでの私は、「仕事とプライベートは分けています。玄関のドアを開けた瞬間に相川七瀬になります」なんてカッコつけてたんですけどね。今は公私の境界線はありません。ステージに上がる直前に、楽屋で息子から「明日、提出しなきゃいけない書類が……」なんていうこともしばしば(笑)。でも、境界線をなくしたら、気負いもなくなって、どちらも自然体でいられるようになったんです。 ――大きな転機ですね。 いい意味での諦めも肝心なんだなと思います。どの世界にいても同じだと思いますが、他人と張り合うことに意味がないように、昔の自分を追いかけるのもエネルギーを浪費するだけ。過去はもう停止している時間で、新しい自分だからこそできる可能性は無限なんですよね。だから今は、自分をアップデートさせていくことを楽しんでいます。
■「やってみたいこと」を諦めたくない ――心のままに変化・アップデートした結果が、大学進学だったんですね。 40代で大学に入学して卒業して、まだまだ私はやれるんだという自信がつきました。それから、人生で初めて、「全部欲しい!」って心から思えたんです。それまではどこかで夢は1つにしなければならないと思っていました。でも40代後半になって、人生は意外と短いのかもしれないと感じ始めて、「何でもやってみたらいいじゃない」「中途半端でもいいじゃない」って自分の「やってみたいこと」を諦めたくないという気持ちになっています。