「危険な睡眠不足」を示す体の4つのシグナル
睡眠中に脳がやっていること
■1. 日中に続く倦怠感 大事な課題に取り組んでいるのにどうも気が散ってしまい、やる気もわかない。こうした日中の持続的な倦怠感はただの疲労ではなく、体の発する不調のシグナルである。見過ごしやすいシグナルだが、だんだんと無視しがたいものになってくる。ひと晩眠ってリフレッシュできる場合もあるかもしれないけれど、倦怠感を日中ずっと感じる状態が続くようであれば、より根深い問題が潜んでいる可能性がある。 日中の倦怠感はただ気だるいというだけでなく、集中力や気分、全体的な生産性を損なうことになる。2022年の研究は、繰り返される眠気が日常生活、とりわけ生徒や学生の日常生活に有意に悪影響を与える可能性があることを明らかにしている。睡眠時無呼吸症候群やレストレスレッグ(むずむず脚)症候群といった根っこにある問題のために、質の高い睡眠が自分でも気づかないうちに奪われているかもしれない。 睡眠不足が常態化すると、睡眠を司る脳の部位である視床下部がダメージを受ける。神山(こうやま)潤による2021年の研究では、睡眠は量(長さ)と質のどちらも同じくらい重要だという点が強調されている。たとえ8時間寝ても、眠りが浅かったり途切れ途切れだったりすれば、日中、倦怠感に見舞われることになるかもしれない。起きている間、気だるさが続くとすれば、それは何か問題があるということのシグナルかもしれないので、健康全般や日常生活に影響が出始める前に対処するようにしよう。 ■2. ブレインフォグ ブレインフォグ(脳の霧)とは文字どおり頭の中に濃いモヤがかかったようになることで、明晰に考えようとしてもできなくなる。記憶障害、注意散漫、集中力低下などさまざまな症状があるが、いずれも精神疲労と結びついている。ラッセル・ローゼンバーグらは『Journal of Clinical Sleep Medicine』誌に最近発表した研究で、過眠症(十分寝ているのに日中眠くなる睡眠障害)の核心にブレインフォグがあると論じている。 ブレインフォグはレム睡眠の不足が原因で発生することが多い。レム睡眠は、脳が記憶を処理し、認知機能を研ぎ澄ませるたいへん重要な睡眠状態で、妨げられると思考が曇るだけでなく、認知機能全体が低下する。ある研究によると、質の悪い睡眠はブレインフォグを招く可能性があり、ブレインフォグは熟睡をさらに難しくしかねず、睡眠まひ(いわゆる金縛り)のような問題を引き起こすこともある。 レム睡眠中に脳は、学習や記憶を支えるシナプス可塑性のような重要なプロセスを行っている。ハーバード大学医科大学院の記事によると、睡眠が不十分だと反応時間が長くなったり、注意が散漫になったり、外界のシグナルにきちんと反応できなくなったりする。たとえば、48時間起きていると認知機能に深刻な影響が出て、集中したり何かを思い出したりするのが困難になる。ブレインフォグは単なる不快な現象というのではなく、脳が切実に必要としている、回復のための睡眠が十分にとれていないという明確なサインなのだ。