道長の暗部をすべて背負い、最期まで政に生きた母・詮子逝く…彰子の将来も影響?【光る君へ】
詮子が倒れたシーンの、彰子のある表情に注目
さらに第29回は「母として」というサブタイ通り、一条天皇を穢から守ろうとする詮子、息子たちを通して静かにマウントを取り合う道長の妻の倫子(黒木華)と明子(瀧内公美)、そして娘のために現実にシビアになったまひろと、母の強さや怖さや切なさがいろいろと描かれた。そのなかで一つ注目なのは、敦康親王の養母となった彰子だ。 13歳の子が2歳の子どもの母になるとか、どう考えても無茶な状況なんだけど、結果的には倫子の助けを借りながらも順調に育て上げ、しかも人物紹介によると、親王は彰子を慕うようになるという、ちょっと禁断の匂いが・・・。今は実に頼りなげな彰子が、そこまでの母親ぶりを見せるのには、詮子が倒れたシーンで、彰子のおびえたような、でもなにかに気付かされたような表情が、一瞬インサートされたのがポイントかもしれない。 彰子がこのあと、父も弟・田鶴(のちの藤原頼通/三浦綺羅)も頭が上がらないようなゴッドマザーになる姿は、今はまったく想像がつかないけど史実ではそうなる。そこにまひろが「紫式部」となって一枚絡むのは間違いなさそうだけれど、この伯母の命がけの姿も、なにかの影響を与えることになるのではないだろうか。そう思えるほどに、吉田羊の気迫のこもった演技もすばらしかった。 そして母となったまひろも、娘のために物語をつづりはじめた。これが『源氏物語』なのかどうかはわからないが、とにもかくにも彰子に仕えることになる、そのカウントダウンが始まったと言ってもいいだろう。果たして彰子の覚醒は、いつどんな形になるのか?『源氏物語』の誕生に負けないぐらい、待ち遠しいトピックだ。 ◇ 『光る君へ』はNHK総合で毎週日曜・夜8時から、NHKBSは夕方6時から、BSP4Kでは昼12時15分からスタート。8月4日放送の第30回「つながる言の葉」では、のちに「和泉式部」と呼ばれることになるあかね(泉里香)とまひろの出会いや、『枕草子』が宮中で流行することによって、道長が追い詰められていく姿が描かれる。 文/吉永美和子