プレミア開幕5連敗、1-8の敗戦から「めちゃくちゃ」成長した静岡学園。攻守で強さを示し、静岡連覇!
[11.16 選手権静岡県予選決勝 静岡学園高 2-0 浜松開誠館高 エコパ] 「めちゃくちゃ」成長した静岡学園が、静岡連覇! 第103回全国高校サッカー選手権静岡県予選決勝が16日にエコパスタジアムで行われ、静岡学園高が浜松開誠館高に2-0で勝利。2年連続15回目の選手権出場を決めた。 【写真】ジダンとフィーゴに“削られる”日本人に再脚光「すげえ構図」「2人がかりで止めようとしてる」 「立ち上げのプレミア(リーグ)のところから見たら、ほんと信じられないぐらいというチームの変わりようで。この選手権も物凄い成長が見られた、という大会でした」。静岡学園の川口修監督は、連覇を果たした選手たちの大きな成長を認める。 今季はプレミアリーグWESTで開幕5連敗。6月の大津高(熊本)戦では1-8の大敗も経験している。だが、苦闘を糧にトレーニングから強度、スピード感を上げたチームは、インターハイで逆転勝ち、後半ラストプレーの同点ゴールからのPK戦勝利などベスト8進出。指揮官も「あの(インターハイの4試合の)経験がやっぱり選手たちのマインドを変えた」というインターハイで自信を得たチームは、その後の夏遠征、後期のリーグ戦でどの相手でも主導権を握れるチームに変化していった。 この日の先発はGK有竹拓海(2年)、右SB望月就王(3年)、CB関戸海凪(3年)、ゲーム主将のCB岩田琉唯(3年)、左SB土田拓(3年)、アンカーにMF堀川隼(3年)が入り、トップ下が篠塚怜音(2年)と天野太陽(3年)、右SH神吉俊之介(2年)、左SH原星也(3年)、1トップを乾皓洋(3年)が務めた。ともに注目SBのDF野田裕人主将(3年)とDF鵜澤浬(3年)を怪我で欠き、大学受験のために静岡県選抜のFW加藤佑基(3年)も不在。だが、プリンスリーグ東海を戦うセカンドチームからの昇格組・神吉らが選手層の厚さを示した。 一方の浜松開誠館高は、2年ぶりの選手権出場へ王手。下級生から経験している選手が多く、プリンスリーグ東海で11戦連続無敗を経験するなど自力がある。決勝の先発はGKが戸塚陸(3年)、DFは濱中伊吹(2年)、ゲーム主将の岩崎総汰(3年、23年U-17日本高校選抜候補)、窪田佑介(3年)の3バック、川合亜門(2年)と橘風芽(3年)が中盤の底の位置に入り、右WB水谷健斗(2年)、左WB友田龍成(2年)、トップ下が森下太陽(3年)、前線は安藤則斗(3年)と服部洸太郎(2年)がコンビを組んだ。 試合開始30秒、浜松開誠館は速攻から安藤がドリブルで持ち込んで右足シュート。対する静岡学園は7分に堀川からのパスを受けた原が縦に仕掛けてクロスを上げると、11分にも土田の絶妙な縦パスから原が一気にPAへ侵入しようとする。 さらに19分には右サイドで望月、神吉、乾が係わる形で細かくボールを動かし、最後は篠塚の足裏パスから乾が左足シュート。そして21分、原の左クロスが相手のクリアミスを誘う。PAで真上に上がったボールに対し、静岡学園の乾が巧みにDF前に身体を入れて自分のスペースを確保。そして、コントロールから右足シュートをゴール左隅へ決め、先制した。 その静岡学園は前半、相手を前から追い込み、浜松開誠館の攻撃を封鎖することに成功。この日、特に効いていた天野や堀川が敵陣の高い位置でボールを奪い返すなど、相手に速攻の機会を与えなかった。 静岡学園は中盤で捕まえきれなくても望月、土田の両SBが対人守備の強さを発揮。CB関戸とともに安定感をもたらし、大会MVPに選出されたCB岩田は、「前から行って引っかけるのもそうですし、切り替えのところも凄い上がってきてると思うんで、そこはいいかなと。こっち(最終ライン)までボールが来ない。それは凄い成長」と守備面のレベルアップを口にする。 伝統的に攻撃的なスタイルだからこその脆さもある静岡学園だが、この日はトレーニングやプレミアリーグで培った切り替えの速さ、強度で浜松開誠館との差を創出。その上で神吉の個人技や篠塚、天野らの正確性によって相手にプレッシャーを掛けていた。 先制された浜松開誠館は、川合の左足FKや水谷のロングスローでゴール前のシーンを作る。30分には森下がワンツーで中央を打開してスルーパス。服部が抜け出そうとするが、静岡学園は土田が対応し、逆に35分には篠塚の奪い返しから決定機を迎える。左の天野の折り返しに走り込んだ望月が強烈な右足シュートを打ち込むが、浜松開誠館GK戸塚が好反応でストップ。跳ね返りを狙った篠塚の右足シュートもクロスバーを叩いた。 浜松開誠館も森下がワンツーからゴールに迫り、最後はこぼれ球から右足シュート。だが、これは静岡学園GK有竹がキャッチし、40+1分に安藤のインターセプトから迎えたチャンスも相手CB関戸に対応されて打ち切ることができなかった。 雨脚が強くなった後半、立ち上がりは前半以上に切り替えの速い攻防に。静岡学園は5分、岩田の1タッチの縦パスで原が左中間を抜け出すが、浜松開誠館は窪田とGK戸塚が身体を張って決定機を阻止する。その浜松開誠館は森下が奪い返しから右足ミドル。静岡学園は16分にも天野の好パスから神吉が左足シュートを放つが、浜松開誠館DF濱中が正面に立ってブロックした。 この日、岩崎を中心に濱中、窪田の浜松開誠館DF陣は前半から要所でシュートブロック。自陣ゴール前で“ゴールを隠す”守備を徹底し、友田らの回収から川合、橘を軸にボールを繋いで攻め返して見せる。そして後半16分に2トップを“切り札”のFW田中脩(3年)とFW高橋成(2年)へ入れ替えて反撃を加速させようとする。 静岡学園は連動した崩しで追加点のチャンスを作り出していたものの、相手の好守と決定力を欠いたことによって突き放すことができない。加えて、後半28分に守りの要・関戸が足を痛めてCB矢澤怜士(3年)と交代。この後はMF戸枝大耀(3年)を投入した相手の勢いを受けてしまい、田中のドリブルなどで入れ替わられるようなシーンが増えてしまう。33分、浜松開誠館は右中間を突破した高橋が左への動きから左足シュート。だが、わずかにクロスバーの上方へ外れた。 静岡学園は終盤、バタバタしてしまうシーンが増えていたものの、堀川や岩田、矢澤が相手の攻撃を一つ一つ跳ね返してゴールに近づけない。迎えた40+2分、静岡学園は相手ロングスローを跳ね返し、堀川が大きく前方へ蹴り出す。そして、単騎で相手DFにプレッシャーをかけた天野がパスをインターセプト。すぐさまセンターサークルから左足を振り抜くと、ボールは背走するGKの手を弾いてそのままゴールへ吸い込まれた。 このあと、FW大木悠羽(3年)を投入して試合を締めた静岡学園が2-0で勝利。川口監督は我慢の時間帯も無失点で終えた選手たちについて、「精神的にも凄く成長したチームになったかなっていう感じですね」と微笑んだ。 苦しいシーズンの中で静岡学園はプレー面、精神面ともに大きく成長。リーグ戦でも巻き返し、残留を決定的なモノにしている。ベンチから優勝を見守った野田は、「(リーグ戦で開幕5連敗した頃は)ここまで行くと思ってなくて、本当にどうしようみたいな感じだったんですけど、ほんと一日一日積み上げてきたものが力になっている」と頷く。ゲームトレーニングに復帰した超攻撃的SB野田が、当初はついて行けなかったというほどの切り替えの速さ。その中で自分たちのテクニックをより磨き上げてきた。 成長を「自分たちでめちゃくちゃ感じています」(野田)。苦闘を経てチームに一体感が出ており、トレーニングの雰囲気も非常に良いのだという。野田はさらに成長できる自信が「めちゃくちゃありますけれども。今大会は本当にサブメンバーもモチベーション高くできてたんで、それが1番の(優勝の)要因かなと思いますし、あとはもう点をどんどん決められるようになって、もっとミスが減ればもっといいチームなるのかなと思います。もちろん、日本一が最終目標ですけど、この大会も1個1個勝っていって 最終的に優勝っていうのがあったんで、一戦一戦、まずはほんとにリーグ戦のところからこだわっていきたい」と力を込めた。3人がJクラブ入りした昨年などに比べると突き抜けた存在は少ないが、歴代でもトップクラスというほどの成長曲線を描く今年の静学。けが人の復帰と日常の激しい競争によってよりチーム力を高め、選手権でさらなる進化を示す。