身体障害者野球 滋賀ビッグレーク 井上光紀 王者との真っ向勝負を経て目指す舞台「日本代表選手としてプレーしたい」
強力打線の王者相手に2失点の完投
準決勝では投手として輝きを放つ。対戦相手は岡山桃太郎。岡山は、本大会5連覇を達成している全国No.1のチーム。 昨年9月の第5回世界大会では5人の代表選手を輩出しており、世界一の原動力となった選手たちが揃っている。 Nexusの指揮を執った林啓介監督(東京ジャイアンツ)が初戦の夜、井上の部屋へ行って先発投手であることを直接言い渡した。 本来であれば、名の知れた格上が相手になると相手を過剰に意識してしまいがちであるが、強いハートが武器の若武者にとって、むしろエネルギーになっていた。 「もう楽しみで仕方なかったです。夜に岡山戦の映像を見てシミュレーションしていました。朝5時に目が覚めたのですが、コンディションはすごく良かったです」 これ以上ないアピールの舞台に立った井上は、持ち前の強気な投球で日の丸戦士にも臆することなく、岡山打線を封じ込めていった。 「緊張しないタイプなんです。気持ちで向かっていきました。何度も三塁にランナーを置きましたけども、不安は全くなかったです」 3回に本塁打を浴び2点を先制されるが、以降もスコアボードに0を刻み、「途中でベンチがざわついていました(笑)」と語るほどの投球内容を披露。 チームは敗れてしまうものの一人で投げ抜き、6回2失点という堂々たる結果を残した。岡山はその後の決勝で11点を挙げており、井上の好投が光った。
「チームとして滋賀を盛り上げたい」
日本代表選手が集う全国大会の場で、2試合にわたり投打で実力を見せた。 「あの選手権大会ではアピールできたと思います。本当に楽しかったに尽きますね。今でも思い出すくらい鮮明に覚えています。ここから飛躍してやるぞという気持ちでしたし、解散する時に『僕は日本代表選手になります』とみんなに宣言しました」 と日の丸への目標がさらに高まった。またNexusでの2日間は、さらにスキルアップを図れた期間でもあった。 「林監督にカーブの投げ方を質問しました。『投げる時に腕が緩んでしまうんです』と聞いたら、『壁があるように』と横に立ってくれて指導いただきました」 林監督は、投手としてロッテと阪神で計8年プレー。NPBも経験した指揮官のその教えは的確で、 「今はそのアドバイスのおかげでカーブが一番いいと周囲に言ってもらっています」と、一つ武器をマスターした。 井上は今も自分と向き合い、その技術を磨いている。更なるステップアップに向けて取り組んでいることを明かしてくれた。 「投手では自分がマウンドでどれだけ落ち着いて、コースに投げ分けられるかをテーマにしています。四球を出さないことが一番大事だと思うので。 打者としてはカウントを作れること。それで甘い球が来たら本塁打にできるよう長打力も上げていきたいです」 目標は日本代表と公言する24歳。当然ながらその先も見据え、今も拠点に置く地元のことも考えている。 「国を背負ってプレーすることもそうですが、チームとして全国大会にで続け、地元滋賀県を盛り上げたいです」 自信に満ちた表情でこう語りインタビューを締めた。将来滋賀から日の丸を背負い、藍色のユニフォームで躍動する日はそう遠くないはずである。
取材 / 文:白石怜平
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