「甘い考えだった」ドイツとFC東京で苦しんだ鈴木準弥の気づきとは? FC町田ゼルビアで再びJ1の舞台へ【前編】
FC町田ゼルビアDF鈴木準弥は昨年12月、地元静岡県沼津市で2泊3日のトレーニングキャンプを行った。ドイツやFC東京では苦しい時間を過ごした経験は鈴木にどのような影響を与えているのか。充実したキャンプを経て、鈴木はJ1の舞台で活躍を誓う。(取材:Footballcoach、構成:編集部)
●「なんとかなるという甘い考えだった」 サッカー選手は一般的な職業と比べて現役として活躍できる期間が限られており、数か月先の自分の立場すら保障されていないこともある。鈴木準弥のキャリアも決して平坦なものではなかった。 幼いころにジュビロ磐田サポーターだったという鈴木準弥は、アスルクラロ沼津U-12からCANジュビロ沼津へ進んだが、ジュビロ磐田ユースへ昇格することはできなかった。清水エスパルスユースに進み、早稲田大学では全日本大学選抜に選ばれるなど、輝かしい活躍を見せていた。 しかし、卒業後に渡ったドイツで壁にぶつかる。ブンデスリーガ3部所属のVfRアーレンで約半年プレーしたが、「言葉も文化も違う。結局なんともならない」と挫折も味わった。その後は半年近く所属先が見つからない時期もあり、「なんとかなるという甘い考えだった」と当時を振り返る。 ただ、その苦い経験は先のキャリアに活かされることになる。2019シーズンに藤枝MYFCと契約を結び、J3リーグで29試合に出場。翌シーズンはブラウブリッツ秋田に加入し、33試合に出場してチームをJ2昇格へと導いた。さらに翌21シーズンの途中にはFC東京へ移籍し、J1に初挑戦することに。ただ、FC東京では出場機会を得られなかった。 2023シーズンは7月11月に町田への完全移籍が発表され、同月22日のジェフユナイテッド千葉戦で新天地デビュー。右サイドバックに加え、シーズン終盤には3バックの一角に入り、17試合で1得点5アシストを記録してチームのJ1昇格に貢献した。 大学時代から鈴木を知る河岸貴氏も「途中から加入して1ゴール5アシストは素晴らしい。良さがすべて詰まったシーズンだったな」と笑う。鈴木も「充実した日々はあっという間だった」と振り返った。 ●「同じ失敗を2回繰り返しましたけど…」 迎える今季、鈴木は半年ぶりにJ1に戻ってくる。FC東京では苦しい時間を過ごすことになったが、「ドイツとFC東京の時に感じたのは、そういう(高い)レベルの中でどれだけ自分を表現できるか(が大切になる)。監督の戦術やサッカー観があるなかで、プラスアルファで自分を表現できる人が日本ならJ1に、海外ならトップリーグに残っている」と言う。 鈴木はこれまでのキャリアを振り返りつつ、このように話す。 「結果が出る前に自分は苦しい思いをするんだろうと思いました。ドイツに行って、藤枝と秋田で結果が出たけど、FC東京ではなかなか結果が出ず。でも、町田に移籍して半年で結果が出た。同じ失敗を2回繰り返しましたけど、結果が出たあとにどこまで自分を律して、上を目指し続けるかが大事だと思います」 今回のトレーニングキャンプをコーディネートした河岸貴氏はこれまでVfBシュトゥットガルトでドイツ人選手を中心に海外の選手、また岡崎慎司、酒井高徳に至るまで、多くの選手を間近で見てきた経験から、「大事なことは自分自身を律すること」と話す。2人が共通して口にする「自分自身を律する」場として設けられたのが、今回のトレーニングキャンプというわけだ。 2泊3日で行われたキャンプは、一般的にイメージされるそれとは一線を画すものだった。12月に行われるトレーニングは通常、フィジカル強化やコンディショニングに重点が行われることが多いが、鈴木が「(今回参加していない)若い選手が参加したらびっくりするかもしれない」と言うほどの内容で、河岸氏も「来たら変わると思うし、こういうところで自分を一度奮い立たせてやるのは大事」と話す。 後編では濃密な3日間のトレーニングに迫る。 (取材:Footballcoach、構成:編集部)
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