「人口1200人の荒野の町」で朝の6時から営業するカフェ…無償で働き続ける華人の好々爺が語った「人生の哲学」とは
人々を支え、愛され続けるカフェ
「少しは報酬をもらってるんですか」 私は気になって尋ねた。 「二人は出したいと言ってるけど、僕は受け取らないよ。給料なんかもらったら、自由人じゃなくなっちゃうからね」と威勢のいい声が店内に響き渡る。 「こういうふうに、好きなときに来て、好きなときに帰るんだ。借りを作りたくないんだよ。誰かに世話になったら、今度は自分がほかの人を助ける。それでいいんだ。そのほうが気分がいいからね。それが僕のやり方なんだよ」 30年来の常連客だというロイド・スミスによれば、ジムの習慣は変わらないという。 「わざわざここのコーヒーを自宅に持ち帰っているんだ。家で淹れるコーヒーは口に合わないんだってさ」 この店の郵便受けは近くの町中にあり(訳注:都市部以外は郵便の戸別配達がなく、地域ごとの集合型メールボックスに配達される)、その鍵を預かっていたのがロイドだ。レストラン宛ての郵便物があれば、店に届けていた。今もジムが目を通してから新オーナーに渡している。 ロイドは「ここはバーで騒ぐような町じゃない。カフェが似合うんだ」と諭すように言う。 「カフェが住民の社交の場なんだ。お茶を飲みながら雑談してね。家でテレビを見ているより楽しいから」 『農家から騎馬警察隊まで! あらゆる人々が訪れる中国式カフェ…よそ者の華人の作った店がいつしか地元の人々の憩いの場へ 』へ続く
関 卓中(映像作家)/斎藤 栄一郎(翻訳家・ジャーナリスト)