まだまだ輝ける“第2の人生”。シニアパートナーがスターバックスで見つけた自分の居場所
敬老の日(9月16日)が近づく中、スターバックスの店舗で活躍するシニアパートナーの姿が注目されている。スターバックスは創業当初から、「誰もが自分の居場所と感じられる居場所」づくりをミッションの一つとして掲げ、年齢や性別、障がいの有無に関係なく、全ての人が生き生きと働ける場を提供してきた。そこで今回、ウォーカープラスでは、60歳を過ぎてから新たな一歩を踏み出した2人のシニアパートナー(従業員)に話をうかがった。スターバックスの元パートナーだったお孫さんから“第2の人生”の背中を押された足立原さんと、バリスタとして店舗を支える大井ゆき子さん、2人の挑戦を追い、それぞれのやりがいとスターバックスとの関わりに迫る。 スターバックス コーヒー 大船ルミネウィング店(神奈川県)に務める 足立原さん ■“先輩”バリスタだった孫からの一言で始まった足立原さんの新たな道 「夫婦で焼肉店を30年やっていました」と語る、大船ルミネウィング店の足立原さん。神奈川県内で藤沢、横浜、茅ヶ崎、逗子に4店舗を展開し、多くのお客様に愛されてきた。しかし、ご主人が亡くなられたのを機に、すべて閉店することを決断。「娘が2人とも別の仕事をしていたので、私たちの代で終わらせることにしました」と足立原さんは語る。しかし、区切りが良いと感じたその決断は、その後の彼女にとっても大きな転機となった。 その後、ゆっくりと過ごしながら「もう少し何かできるのではないか」と考えていた時に、お孫さんからの一言が彼女の新たな道を開いた。 「ばぁばはコーヒーが好きだから、コーヒー屋さんで働いたら?」その提案は、足立原さんにとって思いがけないものだったが、孫の言葉には力があった。なぜなら、お孫さんはスターバックスの元パートナーだったから。「スターバックスの存在は知っていましたが、若い人たちが集まる場所というイメージが強く、自分が働くとは思ってもみませんでした」と振り返る。しかし、お孫さんが彼女に内緒で応募してくれたことで、足立原さんのスターバックスでのキャリアが始まることになった。 ■年齢を超えた絆が生み出す職場の楽しさ 足立原さんは、ライフスタイルに合わせ業務を限定して働く「カフェアテンダント制度」を利用して、スターバックスで勤め始めて6年が経過。コーヒー豆の仕込みや原材料の補充、店内の清掃などを行いながら、レジやパートナーのサポートとお客様への接客をこなす、カスタマーサポート(CS)というポジションを担当している。「ここで働き始めた最初の頃は、全てが新しく、何もかもが手探りでした」。当初は、スターバックス独自の用語や業務に戸惑いもあったそうだ。「パソコンも使えませんし、今でも若い子たちに助けてもらうことが多いですよ」と笑う。それでも、足立原さんは若いパートナーとのコミュニケーションを大切にし、積極的に関わっていく姿勢を崩さなかった。 「私は自分の年齢をあまり意識しないようにしています。若い子たちと同じように接することが大切だと思っています」と彼女は言う。その結果、足立原さんは職場で自然と頼られる存在となり、若いパートナーたちからも信頼を得るようになった。「孫に接するように、接しています」と語る彼女の言葉には、あたたかさと人間味があふれている。 また、スターバックスで働くことで得た最大の喜びの一つは、お客様との触れ合い。足立原さんは「お客様との会話が楽しい」と感じる瞬間を大切にしており、特に印象に残っているのは、毎日訪れる年配のお客様とのエピソードだ。「そのお客様は、いつも抹茶フラペチーノをオーダーされる方で、私のことを気に入ってくださっているようです」と話す。そのお客様が「今度お茶しましょうよ」と誘ってくれた時は、非常に嬉しかったと語る。そして実際にお茶を共にし、仕事を超えた関係を築いている。 こうして、同じ世代のお客様とのコミュニケーションを通じて、スターバックスが多くの人々にとって居心地の良い場所となるよう努力している。「お客様がまた来店してくれた時に、私のことを覚えていてくれると、本当に嬉しいんです」と笑顔で語る足立原さん。ここでの仕事を通じて、彼女は人々に元気と笑顔を届け続けている。 ■スターバックスで若いパートナーと共に輝く日々 スターバックスで働くことを通じて、足立原さんは自分自身の成長を感じている。「若いパートナーからエネルギーをもらっています。彼らの活力が私の励みになっているんです」と言う。その一方で、彼女自身もまた、職場で重要な役割を果たし続けている。足立原さんは、レジやCS業務を担当しながらも、お客様に積極的に話しかけ、スターバックスの提供する商品やサービスを紹介。コーヒーなどのカフェメニュー以外に、コーヒー豆やタンブラーなど物販の売り上げにも大きく貢献している。「最初は全く右も左も分からなかったですが、今ではお客様と話すのが楽しいですね」と自身の成長にご本人も驚いているそう。 この環境で働くことは、足立原さんにとって非常に充実した経験となっている。「ここで働いていると、自分がまだまだ成長できると感じます。若いパートナーからも多くを学び、同時に彼らにも何かを教えることができるのは、本当に嬉しいことです」と笑顔で話す。 スターバックスでの経験を通じて、彼女は自己成長を遂げるだけでなく、他のパートナーたちにも良い影響を与えている。「最後の仕事として、ここで働けて本当に良かった」と語る。また、足立原さんにとってスターバックスは、単なる職場ではなく活力を維持するための場所でもある。「私の人生の中で、大船ルミネウィング店は特別な場所です。ここで働くことで、若い世代と触れ合い、自分の若さを保つことができています」と語る。その笑顔には、仕事を楽しみ、充実した日々を送ることへの感謝の気持ちが溢れている。 ■受け継いだノートを使う日を心待ちに。スターバックスでの新たな挑戦 そんな足立原さんが、最近新たに挑戦したことがある。それは、バリスタとしてのスキルを磨くことだ。「先日、初めてラテを作らせてもらったんです」と嬉しそうに語る。「ラテアートに挑戦してみましたが、まだまだ練習が必要ですね」と控えめに言いながらも、その挑戦に対する熱意が伝わってくる。「今後はもっと上手に作れるようになりたいし、お客様に美味しいラテを提供できるようになりたいです」と、その目標に向けて日々努力を続けている。 実は、お孫さんが都内の店舗でアルバイトをしていたときに、レシピなどのメモを記したノートがあるそうで、「いつか役に立てられたら」と、考えているとのこと。「コーヒーを正確に、美味しく提供できるようになりたい」と語る彼女は、その目標に向かっての第一歩を歩み出したところだ。 お孫さんからの励ましとサポートを受け、若い世代との交流を楽しみながら、自分自身の目標に向かって努力を続ける彼女。その姿は、多くの人々にとって励みとなっている。 お客様との触れ合いを喜び、日々成長を続ける足立原さん。彼女の笑顔と情熱が、スターバックスの空間をさらにあたたかなものにしていた。 ■67歳で輝くバリスタ大井さんの心あたたまる仕事術 続いて、話をうかがったのは、以前、キリンビールで営業職をしていた大井さん。退職後の現在は、スターバックス コーヒー 大田原美原店でバリスタとして、カウンター内で絶え間なく作業をこなしている。前職で顧客とのコミュニケーションを大切にしてきた経験が、ここでの成功に繋がっている。 彼女がスターバックスでの社会復帰を決意したのは、友人と車で訪れた西那須野店の「あたたかい雰囲気」と「親しみやすさ」に感動したから。あの店舗の雰囲気が、心に深く刻まれた。それが、彼女にとっての転機となり、新しい挑戦への一歩を踏み出す原動力となったのだ。 ■大井さんの仕事に対する情熱と挑戦、学びの実践 スターバックスでの勤務は、大井さんにとって単なる仕事以上の意味を持っている。「たくさんの良いことがあり、一つひとつ積み重ねていけることが特に喜びです」と、ここで働いてよかったことを教えてくれた。その言葉からも、日々の業務を通じて自分自身がどのように成長しているかが伝わってくる。 大井さんも足立原さんのように入店当初は「カフェアテンダント制度」を利用。しかし、次第にバリスタとしてのスキルを磨き始め、カウンターでお客様にコーヒーを提供するようになった。CSからバリスタへのステップアップのきっかけについて、大井さんは「私は朝が得意だったので、急にシフトに入れなくなったパートナーの代わりができると、バリスタに挑戦したいと思いました。そうすれば、もっと店舗の役に立てると感じたからです」と当時の心境を語る。そして、周りの人たちが『やってみたら?』と背中を押してくたことが、挑戦する大きなきっかけに。「前の店長さんやマネージャーたちが、私を大事にしてくれ、自信を持てるように育ててくれた」と振り返る。周囲のサポートと励ましも、大井さんの成長を支えているのだ。 「お客様ファーストを意識することで、些細なことが気にならなくなります」と、スターバックスでの経験から得た学びを明かす。他のパートナーがクレームを受けたとき、その影響でパートナー同士の雰囲気が悪くなったことがあったそう。そのときに、「目線をお客様に向けると、全てが気にならなくなる」と気づいたそうだ。お客様の笑顔や挨拶に集中することで、自分の感情よりもお客様へのサービスが最優先であると学んだ。その結果、仕事への取り組み方が大きく変わったのだ。 そして、忘れられない失敗エピソードも。 「あるとき、『これは甘いものですか?』と聞かれ、『甘くないです』と答えたところ、後で『甘かった』とのお電話がありました。お客様の味覚は異なるので、自分の感覚だけで答えないようにしようと感じました。お客様のニーズに応える大切さを日々学んでいます」 この経験を通じて、よりお客様に寄り添ったサービスを心がけるようになったとのことだ。失敗から学び、それを次に生かす姿勢が、周りからの信用につながっている。 ■自分自身の意識と自己管理が大切 シニア世代のライフスタイルが、ひと昔前と比べは大きく変わってきた現代。スターバックスでの67歳になる自身の働き方について、「自分で体力を維持しながら頑張っている感じです。『頑張りな私』と自分を励まし、周囲に迷惑をかけないようにしています」と大井さん。このように、自分自身の意識と自己管理が大切だと実感しているそうだ。 さらに、お客様の名前や細かい情報や気付きを記録するために、ミニノートを活用している。スターバックスで働き始めて約5年。そのノートも3冊に。「お客様一人ひとりのことを大事にするために、常にメモを取り、情報を大切にしています」と話す。こうした細部にわたる配慮も、信頼されるバリスタとしての地位を築く要因だ。このように、彼女は顧客のニーズに応えるスキルを日々磨き続けている。 ■あたたかいつながりがもたらす大井さんの顧客との絆 大井さんが大切にしているのはお客様との交流。「あるお客様が、『彼氏と来たときに、すごいコメントをもらい嬉しかった』と話してくれたことがあります。自分はそのコメントを覚えていなくても、お客様が覚えていてくれるのは嬉しいです」と語る。 さらに、「また別のお客様から『あなたを見て、自分も頑張ろうと思った』と言われたこともあるんですよ。特に元気がない時に、『こんなに頑張っている人がいるから、自分も頑張ろう』と言われたことも、自分の力になっています」と、このような励ましの言葉は、モチベーションを高める大きな要素になるそうだ。 こうして、大井さんは交友関係を広げ、今では店舗でのつながりをきっかけに、お客様との良好な関係を築いている。「スーパーなどで『今帰り?』とか『またお店に行くね』と、声をかけられることが増えました。自分が接したお客さまとの関係が、仕事以外の場面でも続いていることが嬉しいです」と話す。彼女のあたたかい人柄と真摯な対応が、多くの人々との良好な関係を築くきっかけとなっているのだ。 ■世代を超えた、友だち感覚のフラットなコミュニケーション 孫よりも年の離れたパートナーとのコミュニケーションについて、大井さんはこう話す。「この年代になると、体は少しくたびれてきますが、気持ちは全然変わらない」とのことだ。「世代が違っても、孫世代でも子どもの世代でも、同じように接しています」と語り、世代を超えたコミュニケーションを大切にしている様子が伝わる。パートナーたちから「ゆきちゃんみたいに年取りたい」と言われることがあり、その友だち感覚や親、おばあちゃん感覚での接し方のおかげで、多くの人々との良好な関係を築けている。 同世代や高齢のお客様への配慮についても、大井さんは「初めて来店される高齢の方には、『私も最初は分からなかったから大丈夫ですよ』と声をかけ、気持ちに寄り添っています」と語る。初めてのお客様が安心して店舗に来店できるよう、大井さんは常に心を配っている。このような気配りが、スターバックスでのサービスに深みを加えている。 「スターバックスで働くことで、自分に自信を持てるようになり、家族にも胸を張れるようになりました」と語る大井さん。その経験が、自分自身の成長にどれほどつながっているかがよくわかる。「ドライブスルーでのやり取りは、長く顔を合わせるわけではありませんが、お客様との瞬間が一番楽しいです」と話す彼女の言葉から、仕事に対する深い愛情と喜びが感じられた。 パートナーとして新たなキャリアを歩み始めた足立原さんと、大井さん。彼女たちがスターバックスで築いてきたものは、単なる仕事以上の価値を持っている。孫の一言から始まった足立原さんの挑戦は、静かな生活に変化をもたらし、新たな生きがいを見つけるきっかけとなった。大井さんは、これまでの経験を活かしながら、新たなスキルを習得し、バリスタとしてさらなる成長を遂げている。 現状に満足せずに、前向きで、楽しみながら成長を続ける2人の挑戦と成長は、店舗のパートナーやお客様にとっても励みとなり、スターバックスの大切にしている価値観そのもの。これからも、彼女たちはその笑顔で、多くの人々に元気と感動を届け続けるだろう。 ●足立原さん 大船ルミネウィング店 2018年11月から勤務 【足立原さんのおすすめペアリング】 「スマトラ」と「あんバターサンド」 「あんバターサンドは、特に年配の方におすすめです。 あんこが好きな方だったら、気にいると思います」 ●大井さん 大田原美原店 2019年9月から西那須野店で勤務。同年12月に大田原美原店の開店に合わせ転籍 【大井さんのおすすめペアリング】 「カフェ ベロナ」と「チョコレートチャンクスコーン」 「すごくシンプルなペアリングですが、コーヒーってこうやって楽しむんだなと思いました。いろいろな人に伝えています」