社説:税金の無駄遣い 補正予算の膨張を慎め
会計検査院がまとめた2023年度決算検査報告で、官庁などの税金の無駄遣いが345件、計648億円に上ると指摘した。 IT導入や新型コロナウイルス対策に絡む補助金や交付金などでずさんな運用が目立ち、法令違反や不適切な予算執行としたものは約77億円にも及ぶ。 厳しい財政状況にありながら、巨額の税金が浪費されていることを政府は猛省せねばならない。 今回の報告では、近年のコロナ対策で規模が膨らんだ補正予算も検証した。 22年度に計上された32兆円のうち、少なくとも34事業、約1兆4800億円が使われず、全額を翌年度に繰り越していた。 財政出動の規模ありきで、緊急性や必要性が乏しい事業がいかに多かったかを物語っていよう。 政治主導で短期間で編成される補正予算は、財務省が査定する本予算に比べ、省庁の要求が積み上がりやすい。原則として当初予算と一体的に管理されるため、執行状況が見えにくく、国債発行依存が強まる弊害も指摘される。 石破茂首相は月内に経済対策をまとめ、裏付けの補正予算案は昨年度の13兆円を上回る規模にすると表明した。物価高対策や地方創生を柱に盛るとしても、それほど緊急的な上積みが必要なのか。検査院報告を真摯(しんし)に受け止め、野放図な膨張は慎むべきだ。 感染症対策やデジタル化など政府の優先課題に関する交付金や補助金を巡るずさんさも目に余る。 コロナやインフルエンザ対策で病床確保や発熱外来の態勢を整えるなどした医療機関に対する交付金では、約21億円分の過大交付が判明した。事業者の制度の理解不足に加え、明らかな虚偽内容の申請もみられ、厚労省や自治体の審査の甘さが露呈した。 中小企業向けの「IT導入補助金」の不正受給や、従業員のリスキリング(学び直し)の助成金でも不適切支出が目立った。審査の簡略化が悪用された面はあるが、疑わしい事案にも指導や調査を怠ったケースがあったとする。 検査院は「高い割合で不正が判明し、補助金が食い物にされるケースがまん延していた」という。 政府は毎年の検査報告での指摘を軽視し、事業の吟味や効果の検証を怠ってきたのは否めない。 野党も衆院選公約で減税や支出増を訴えたが、財源にも責任を持つ必要がある。与野党伯仲となった国会で、危機感を持って税金の使途を精査してもらいたい。