「往生際が悪くても辞めるわけにはいかない」由規選手が2度の戦力外通告でも野球を続ける理由
野球の楽しさを改めて実感したトライアウト
プロ入り後の由規選手は右肩の故障などもあり、多くの時間をリハビリに費やした。その都度、復活を果たして一軍の舞台に返り咲いてはいたが、登板数は年々減少。2018年にはヤクルトから戦力外通告を受けて故郷・宮城県の楽天に移籍。そして昨年オフ、その楽天からも戦力外通告を受けた。 ――トライアウトを経て、今季はNPBではなくBCリーグの埼玉武蔵ヒートベアーズに入団。独立リーグに移籍しても、野球を続けようと思ったきっかけは? 由規選手: 戦力外通告を受けてからトライアウトを受けるまで、悩んだのも正直なところです。トライアウトを受けることで諦めがつくかなという部分もゼロではありませんでした。 ただ、トライアウトって周りからは悲観的に見られがちなんですけど、実際に初めて受けてみて、結果的に野球を楽しむことができた。もちろん、これからの進路を決める大事な舞台なので緊張感もありました。でも、「楽しい」と思えたからこそ、どんな環境でも野球を続けたいという気持ちになりました。
そんなとき埼玉武蔵ヒートベアーズからオファーをいただけて、まずは野球をやれる環境を与えてもらえた。もちろん目標はNPBに戻ることですけど、チームに入った以上は貢献したい気持ちもあるし、今は環境も含めて新しい気持ちで野球に取り組めているので、(トライアウト受験、BCリーグ入りは)良い選択だったのかなと思います。
ケガをした人にしか分からない“復活したときの喜び”
――度重なるケガや2度目の戦力外通告。これまでたくさんの苦難を経験されていますが、心が折れそうになったことはなかった? 由規選手: それはもう、ありましたよ。でも苦難というか苦しい時期を経て、もう一度一軍のマウンドに立たせてもらったという経験が自分の中では大きくて。 「復帰戦」っていうのは、ケガをした人にしか分からない喜びであったり、感情があるんです。なんだろう……苦しいこと以上に、嬉しかったから。その経験が「病みつき」になっているというか、だから辞められないなというのが大きいかもしれないです。 ヤクルトで復帰した時も、楽天の時も、試合のことはあまり記憶にないんです。マウンドに上がるまでの雰囲気とか、球場の熱みたいなものはすごく覚えているんですけど。それこそ、その時だけは自分が漫画の主人公になったような……(笑)。表現は難しいし、大げさかもしれないけど、本当にそのくらいの感覚だったので。 もし、(NPB時代に)リハビリをしても一軍に復帰できていなかったら、もっと早く諦めがついていたかもしれないです。復帰の舞台を作っていただいた球団にもすごく感謝していますし、あの時待っていてくれたファンの存在もモチベーションになっています。 周りから見れば往生際が悪いと言われても仕方がないと思いますけど、だからこそ体が元気なうちに辞めるわけにはいかない――。今はそういう気持ちです。