【心肺蘇生】救命の備えしっかりと(7月10日)
7、8月は1年の中で救急出動が多い時期となる。救急車の出動が増えると到着は遅くなる傾向にある。一刻を争う手当てが必要な場合、居合わせた人による自動体外式除細動器(AED)の使用を含めた心肺蘇生が救命率向上の鍵を握る。夏のレジャーや行楽期に備え、正しい知識と技術を広げていきたい。 消防庁の統計によると、2022(令和4)年の全国の救急出動件数は過去最多の723万2118件で、20年前の約1・6倍となっている。通報から救急車到着までの平均時間は10・3分で4分遅い。救急搬送者を年齢別にみると、65歳以上が62・1%を占めている。高齢化が進めば救急要請が増え、到着はさらに遅れる懸念がある。 2022年の救急搬送者のうち、周囲に人がいる状態で心肺停止になったのは2万8834人。救急車が到着する前に、近くの人から心肺蘇生を受けた場合の1カ月後の生存率は12・8%で、受けない場合の約2倍だった。社会復帰できたのは8・8%で約3倍の差があった。AEDを使った場合の生存率は50・3%、社会復帰率は42・6%に達する。しかし、心肺蘇生を受けたのは全体の59・2%、AEDの使用は4・3%にとどまっていた。心肺蘇生の普及とともに、AEDを適所に設置し、誰でも使用できる対策が改めて求められる。
会津若松地方広域消防本部は、約20年前から応急手当推進事業所を認定し、付近で救命処置が必要になった際に迅速に提供できる体制を築いている。市民によるAEDの使用が認められたのに合わせて始まり、継続している。 福島市消防本部は、AED4基を町内会や体育・青少年団体などがイベントを行う際に無料で貸し出している。一昨年3月には、備え付けている事業所を登録して地図で公開し、通報を受けた際は必要に応じて最寄りの設置場所を伝える取り組みを始めた。 関係機関の取り組みと合わせ、市民個人の協力も欠かせない。公共施設などのどこにAEDが配置されているかを目立つように知らせる工夫を心がけたい。自宅や職場近くの設置場所を確認しておくのも大切だ。心肺蘇生については、地域での講習などに加え、消防庁の動画も有効に活用してほしい。(三神尚子)