余るほど大学が増えた一方で教育の質は…世界の大学・人材ランキングが突きつける「暗澹たる日本の行く末」
大学の赤字を学生ローンで学生に付け回し
それにしても、少子化で進学する者が減るのに合わせ、なぜ大学を減らさなかったのだろうか? 経営が成り立たないのなら、資本主義なのだから自然淘汰に任せるのが自然であり、それがルールだ。 ところが、日本という国は社会主義国家であるため、なんでもかんでも公的資金で救ってしまう。さらに、官僚たちは自分たちの天下り先が確保できるので、新設大学をどんどん認可してきたのである。しかも、「奨学金」という名の「学生ローン」(借金)で、学生に入学金、授業料を払わせ、赤字を付け回している。 少子化で大学入学年齢の18歳人口が減っているのに、大学数は増え続けている。30年前の1992年18歳人口は約205万人で大学数は384校。それが2023年は約112万人なのに793校である。 これでは、有名人気校を除いてどの大学も経営が苦しくなるのは当然。現在、3人に1人の学生がローンを背負っているとされ、返済できなくて自殺者まで出ている。学生ローンは学生のためにあるのではない。経営苦の底辺大学を生き延びさせるためにあるのだ。
小手先の入試改革など意味はない
2023年1月25日、文部科学省は中央教育審議会大学分科会で、今後の受験科目の見直しや英語民間試験活用などの改善を求める指針案を示した。その内容を見ると、今回の指針の目的は、高校段階から文系理系に偏らず幅広く学び、大学で文理の枠を超えた能力を伸ばせる大学生の拡大を狙うということのようだ。 現在、国立の入試は原則「5教科7科目」だが、私立は受験生を集めやすくするため、科目数を減らしている。たとえば、慶應義塾大学の経済学部(B方式)などは経済学を教えるというのに、入試必須科目に数学がない(ただし、「A方式」は数学あり)。文科省はこれを是正すると言う。 早稲田大学の政治経済学部は2021年度から数学を入試必須科目にした。だが、私大文系入試に数学を科す動きは広まっていない。また、高校では2年生から、文系、理系にコース分けてしまって受験教育を行っているが、これでは教育に偏りが出てしまうので、是正すべきと言うのである。 さらに、英語では、スピーキング力などを問う英語民間試験を活用する大学が2割程度にとどまって普及していないから、これをもっと活用せよと言うのである。 ざっと指針案を見たが、まったくの小手先の話だ。そんなことより、日本を実力社会につくり変え、官庁と企業に新卒一括採用、年功序列、終身雇用をやめさせれば、大学教育もその下の小中高教育もガラッと変わるだろう。このままでは、日本の若者の将来はかぎりなく奪われる。日本の衰退は避けられない。