大後寿々花、11歳でハリウッドデビュー。子どもに対する日米の違いに驚き…現場でも「絶対に1日3時間勉強しないといけない」
撮影期間中は絶対に1日3時間勉強
日本とアメリカの撮影システムの違いは多々あるが、一番驚いたのは撮影現場で勉強時間が決められていたことだったという。 「アメリカでは子どもが働ける時間が決まっていて、9時間の内の3時間は絶対に勉強しなければいけなかったんです。だから『カット』がかかるたびにトレーラーに行って勉強しなきゃいけない。 たとえば、それがどれだけびしょ濡れであろうが、どれだけ寒かろうが、『スクール!』って言われて、教科書と向き合わなきゃいけないというのが一番つらかったかもしれないです。 撮影中は、『もうやるしかない!』という感覚だったんですけど、『カット』がかかってもホッとできないというのが、撮影よりもきつかったかもしれないです」 ――その3時間はどのように勉強されていたのですか。 「家庭教師の日本人の先生がいてくださったので、教えていただいていました。小学生だったので進級できましたが、奈良橋さんが『勉強は絶対しなきゃいけない』ってずっと言っていらしたので、日本で塾に通っていて。だから塾の教科書をアメリカでもずっとやっていました」 ――お母さまは、半年間ずっと一緒にアメリカにいらしたのですか。 「はい。ずっと一緒にいてくれました。だからお父さんたちは日本で留守番みたいな感じで(笑)。もしかしたら私より母のほうが大変だったかもしれないです」 ――精神的にも肉体的にも撮影は大変だったと思いますが大丈夫でした? 「はい。向こうはケアがすごいんです。たとえば子どもが『ちょっとお腹痛いかも』と言っただけでも、撮影がスパンって止まるんです。それで、ドクターが来て…という感じで俳優に対するケアが徹底されていたので、つらいけどやらなきゃいけないみたいな環境ではなかったです」 ――撮影で印象に残っていることはほかにありますか? 「謙さんとは子ども時代に出会うところしか共演シーンがなかったのですが、現場に結構遊びに来てくださって。『ご飯食べにおいでね』って言ってくださって、何回か作ってくださいました」 ――渡辺謙さんがご自分で作られたのですか。 「はい。『好きな食べ物は?』って聞かれたので、『ピーマンの肉詰めが好きです』って言ったら、『じゃあ、お家で』と言って作ってくださって。とてもおいしかったです。私は子どもの頃は、結構食べ物の好き嫌いがあったので、母もかなり苦戦していたんですけど、ピーマンの肉詰めは好きだったんですよね」 ――優しいですね。謙さんとの橋のシーンもとてもきれいでした。大後さんは、ほかのシーンでは走らされて、叩かれて、突き飛ばされて…大変そうでしたね。完成した映画をご覧になっていかがでした? 「映像がすごくきれいだなって思いました。ロブ・マーシャル監督がすごく日本を好きでいてくださっていたので、ちょっと着物の裾が揺れるとか…日本の美みたいなのを理解してくださっていて。 たとえば下駄を履いたまま走るとか、昔の日本人ならしないかなみたいな部分も多々ありながらも、わりと美しさみたいなのはすごく残っていたんじゃないかなって思います」 ――大後さんの泣いているシーンがすごく自然で切なかったです。 「でも、多分私自身はつらく考えていなかった気がします。つらいシーンの撮影があっても『お疲れさまでした』ってなったら、『お腹がすいた』という感じで(笑)。アメリカって撮影現場にお菓子の量がすごいトレーラーがまた別にあって“お菓子の国”みたいだったんです。 カットがかかるたびにそこに行って、いつも何か新しいお菓子がないか探していました(笑)。日本と違って、すごい色のお菓子とか、真っ赤なグミみたいなのもあって、あれこれ手に取って食べていました。 母も安心だったと思います。とりあえずお菓子置き場に探しに行けばいるというのは。いなくなることがないから」 ――準備期間も入れると6カ月間アメリカで過ごし、撮影が終わったときはどうでした? 「アメリカの撮影が終わったあと、ちょっと時間が空いて、日本で京都伏見稲荷などでの撮影が残っていたので、まだ終わったという感じはありませんでした」 ――『SAYURI』に出演されて変わったことはありますか? 「そうですね。子どもの頃はまだ仕事という意識はなかったんです。小学校1年生のときからやっていると、習い事みたいな感覚で、仕事という感じではなかった。学校と同じように生活の一部みたいな感覚だったので。 でも、『SAYURI』でアメリカに行ってから仕事として意識するようになりました。お芝居が楽しいなと思いましたし、お芝居に対する考え方が変わりましたね」 ハリウッド映画『SAYURI』出演で話題を集めた大後さんは、ドラマ、映画に次々と出演。2007年、ドラマ『セクシーボイスアンドロボ』では七色の声を操るヒロインの少女・ニコ役。同年に公開された映画『遠くの空に消えた』では、父親がUFOに連れ去られたと信じる少女・ヒハル役など難役にチャレンジ。 次回は撮影エピソードなども紹介。(津島令子) ヘアメイク:木戸かほり