学生には人気職業だが…公務員の「安定した雇用・給料」が実は“デメリットにもなる”ワケ
コロナ禍を機に、就職先として「公務員」を検討する学生が増加傾向にあります。ただし物事にはメリット・デメリットがあり、これは公務員も例外ではありません。また、一般にメリットとして謳われている要素でも、人によってはデメリットとして作用することも…。山内太地氏・小林尚氏の共著『やりたいことがわからない高校生のための 最高の職業と進路が見つかるガイドブック』(KADOKAWA)より一部を抜粋し、見ていきましょう。本稿では小林尚氏が解説します。
公務員の職務・待遇は法律で決まっている
本稿では、公務員と会社員の違いを少しくわしく見ていきましょう。まず、お伝えしたいのは、公務員は採用から働き方、給料に至るまで、すべて基本的に法律で決められているということです。 たとえば、給料について言うと、図表のように担当する職務に応じて「級」「号給」というものが定められていて、それによって給料やボーナスの額が決められています。
公務員のメリットとは?
■終身雇用・年功序列が確立している⇒安定した待遇 もう1点は、公務員は会社員以上に終身雇用、年功序列が明確になっているということです。 会社員(正社員)の雇用も期限が切られているものではありませんが、会社が倒産すれば当然仕事はなくなります。また、民間企業では近年、実力主義の傾向が強まり、年功序列が崩れつつあることもすでにお話ししたとおりです。 これに対して、公務員は法律で規定されていますので、国家公務員なら日本という国がなくならない限り原則雇用は続きます。給料や昇進も法律が変わらない限り年功序列が崩れることはないでしょう。その意味では、会社員よりも公務員の待遇は安定していると言えるかもしれません。 ■一つの職務にじっくり取り組める⇒「自分のやりたい仕事」を続けられる 公務員の職務は細分化されていて、図表のように、それぞれの等級で定められた仕事をするとか、同じ国家公務員でも省庁ごとに仕事が割り当てられているとか、裁判官は裁判官としての仕事、警察官は警察官としての仕事をするように、職務内容も個別に決まっています。 その意味では、自分がやりたいこと、得意なことを仕事にできればやりがいをもてるし、よほどのことがない限りクビになることはないので、腰を据えて長期的なスタンスで仕事に取り組めます。 ■「公共の利益」のために働ける 会社員が金銭的な利益をいちばんの目的として仕事をするのに対して、公務員はそうではないこともメリットかもしれません。 たとえば、警察官なら犯罪や交通事故などから市民を守る、自衛官なら日本の独立や安全を守る、国家公務員なら国をよくする、地方公務員なら地域住民が暮らしやすい町をつくるといったように、公共の利益のために働くことができます。 公立高校の先生と塾の講師を例にして話を続けましょう。私は大学受験向けの塾をやっています。塾に通う生徒さんたちが希望の大学に合格できるよう、日々一生懸命指導しています。一方で、指導者であると同時に民間企業の経営者でもあります。どうすれば多くの生徒さんに入塾してもらえるか、どうすれば会社として利益を残して講師の方により多くの給料を払えるか(もちろん自分の給料も!)などを基準に働いていることも事実です。その意味で、学校の先生とは働き方が違います。 塾は利益第一主義だからダメだと言っているわけではありません。ただし、学校の先生はみなさんにとっていちばん頼りになる存在であり、公務員である学校の先生は、金銭的利益を考えることなくみなさんの高校生活を支えてくれる存在だと思っています。
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