【ラグビー】2027年度の日本一に向け、強化を進める三重ホンダヒート。パブロ・マテーラらと契約更新。
豊田自動織機シャトルズ愛知との入替戦を1勝1敗で終え、勝ち点で上回って来季のディビジョン1残留を辛くも決めた三重ホンダヒートが、チームの強化を加速させている。 親会社の本田技研工業といえば、Jリーグ参入を見送ったサッカー部(現Honda FC)を筆頭に、何十年もアマチュアクラブにこだわっていた会社だ。しかしこのほど、その方針を転換させた。 2022年12月に同社は「スポーツ活動強化のビジョンと方向性」を発表し、2023年7月には保有する7つの運動部から、ラグビー部(三重ホンダヒート)と陸上部(ニューイヤー駅伝で2022年から2連覇)を「ブランディングスポーツ」へと格上げ。モータースポーツと並ぶ同社のシンボルスポーツとして、本格的な強化に乗り出したのだ。 きっかけはリーグワンの創設にあった。前田芳人GMは振り返る。 「2018年度と2020年度は9位とトップリーグの中位のチーム力があったにも関わらず、リーグワンの審査では事業面での企業スポーツ色が強く(当時はファンクラブもなかった)、そこでの評価が非常に低かったためにディビジョン2からのスタートになりました。これが会社の中でのスポーツの位置付けを見直す機会になり、ラグビーというスポーツの可能性を会社が認識してくれました」 2022年度からは山田章仁(現九州KV)以来となる日本人プロ選手(藤田慶和や金井健雄ら)を獲得し、社員選手のプロ契約も限定的に解禁。 ディビジョン1に昇格した昨季は、イタリア代表を強化させたキアラン・クローリーHCと長期契約を結んだ。シーズン中には同代表のディフェンスコーチ、マリウス・フーセンも招聘した。 5月29日には、全選手の3分の1にあたる21人の退団を発表。これは、それだけ多くの有望選手の加入を予定しているということだ。 前田GMによれば「15人程度」の獲得を予定しており、来季の編成はヒートとして初めてプロ選手が社員選手の数を上回るという。 まさに新生ヒートで来季に臨むが、軸となる選手が残留するのは大きい。LOフランコ・モスタート、NO8パブロ・マテーラ、FBトム・バンクスと、他国の代表歴を持つカテゴリC選手全員が、契約を更新した。 ワールドカップ2023フランス大会の日本戦で太もも裏を負傷(ハムストリングスを断裂)したパブロ・マテーラは今季、第14節に復帰。ディビジョン1残留に向けて、大仕事をやってのけた。 尻上がりに調子を上げ、入替戦の第1戦では4トライを挙げた。2戦目はチームこそ敗れたが、貴重なトライでチームの危機を救った。 「正直、すごくプレッシャーのかかったゲームでした。すべてをかけて必死に向かってくるチームの勢いを感じました。最終的に負けてしまいましたが、ディビジョン1残留という結果を手にできて満足しています。苦境に立たされたチームに前進する力を与えるようなトライを取れて嬉しかったです。自分にとってはまだ改善しないといけないところがたくさんあるのですが、チームが自分を一番必要としている大事な局面で復帰できて本当に良かった」 ヒートと契約を更新した決め手を、「すごく大きな志を持ったプロジェクトがホンダにはあった」と話す。ヒートは2027年度の日本一をターゲットに掲げている。 「この大きなプロジェクトを成功に導いていけるように、私もその一部になりたいと思いました」 契約年数については「わかりません」と明言を避けたが、「優勝するまで? そうかもしれませんね」と表情を崩した。 (文:明石尚之)