ズーズー弁で落語!?東北弁落語が切り拓く笑いの魅力とは
六華亭遊花さんが演じた東北弁落語(宮城県仙台市、平間真太郎撮影)
熊さんや八つぁん、横丁のご隠居にお寺の和尚さんまでもがズーズー弁!?東北地方の人たちになじみのある方言を巧みに取り入れた落語の世界に、当地の聴衆は大笑いだ。 古典落語や東北地方に伝わる民話を素材にした創作落語を方言で演じる「東北弁落語」。東北のお笑い文化の中で、その存在感がじわりと増している。客を虜にする東北弁落語の魅力とは。
「東北弁」の掛け合いに客席は笑いの渦
寒さが身に染みる2月最初の週末。仙台市中心部の小さな映画館で月1回開かれている魅知国(みちのく)仙台寄席は、外の寒さがうそのように笑いと熱気に包まれていた。154の座席はすべて埋まり、通路には立ち見客がひしめく。 漫才や江戸落語などの演目の中で、客席をひときわ沸かせたのは三遊亭遊三(さんゆうていゆうざ)一門の落語家・六華亭遊花(ろっかていゆうか)さんが演じる東北弁落語だ。 「東北(とうほぐ)のお客さんは天候の悪い日ほどくんの(来るの)。わだしだけでも行かねとガラガラなんでないべかって(ガラガラなんじゃないか)」。本筋に入る前の「まくら」で客席を惹きつける。
東北弁で繰り広げられる「てんしき」
この日の噺は「転失気(てんしき)」。中国の古い医書にあるおならを意味する言葉だ。腹痛を訴えた和尚が、「転失気はあるか」と医師に問われ、知ったかぶりをしたことから繰り広げられる大人たちの滑稽な姿を描く。 和尚に命じられて「てんしき」を借りに来た小僧に近所の人たちは「味噌汁さ入れて食った」「(先祖代々のてんしきが)ネズミさ食われて粉々になってらった(なってしまった)」とわかったふりをして逃げ口上。医師に意味を教えられた小僧は、いつも偉そうに叱責する和尚に一杯食わせてやろうと「てんしきとは盃」とうそをつく。 まんまと信じた和尚、「お寺に人いっぺ(いっぱい)集めで、みんなでやるのが好きだおん」と、自慢のてんしき(盃)まで見せようとする。それを見た医師は「仏教では酒っこ呑む盃のことをてんしきと言うのすか?」。恥をかいた和尚は小僧を叱ろうとするが、小僧は「和尚様にごっしゃかれる(怒られる)のは屁でもありません」 登場人物たちが、なじみのある東北の言葉で繰り広げる掛け合いに客席の老若男女は大喜び。涙を流して笑い転げる人もいた。魅知国仙台寄席が始まった2010年6月から毎回演じられてきた東北弁落語では、すっかりおなじみの光景だ。