多民族チームに変貌したサッカー独代表 右派政党の“排斥”発言が論争に
サッカーの欧州選手権が6月10日からフランスで開催されます。12大会連続で出場するドイツ代表は、今回も優勝候補に挙げられていますが、代表メンバーのアフリカ系の選手やイスラム教徒の選手に対して、国内の右派政党の関係者が「ドイツ的でない」とコメントしたことが大きな論争に発展しました。右派政党関係者による代表選手バッシングとはどういったものだったのでしょうか? 【写真】難民問題で揺らぐ「シェンゲン協定」 廃止なら欧州にどんな影響がある?
「隣人としては迎え入れたくない」
かつては白人ばかりだったドイツ代表。現在では「多民族国家ドイツ」を象徴するように、さまざまな移民系選手が選出されています。 長年にわたってディフェンスの要として活躍し、今回の欧州選手権でも活躍が期待されるジェローム・ボアテング選手はベルリン生まれですが、アフリカのガーナにルーツを持つ選手です。ファンからの人気も高いボアテング選手に対し、ドイツの右派政党「ドイツのための選択肢(AfD)」のアレクサンダー・ガウランド副党首が5月29日にドイツメディアのインタビューの中で、「ドイツ人は選手としてのボアテングを称賛するが、隣人としては迎え入れたくないはずだ」と発言。この発言に対して、ドイツ中から非難の声が湧き上がり、メルケル首相の広報官も「品性のない発言だ」との声明を発表。間もなくして、フラウケ・ペトリー党首がツイッターで謝罪しています。 ガウランド氏の発言がメディアによって伝えられた5月29日、ドイツ代表は南部アウグスブルグにスロバキア代表を迎え親善試合を行いましたが、スタジアムに集まった多くのファンが「ボアテング、ぜひ我々のお隣さんになってください」と書かれた横断幕を持ち、ボアテング選手を支持しました。 ボアテングの兄で、現在はイタリアのACミランでプレーするケビン・プリンス・ボアテング選手も数年前に差別的なチャントに直面しています。2013年1月、ACミランはミラノ近郊のブストアルシチョを拠点とする4部リーグのクラブと練習試合を行いました。試合開始直後から、地元の観客がボアテングや他の黒人選手に対して差別的なチャントを続け、前半25分に止まないチャントに憤慨したボアテング選手がボールを観客席に向かって蹴り入れ、そのままピッチを後にしました。ミランのチームメイトもボアテングの行動を支持し、ピッチから引き揚げ、練習試合はわずか25分で終了しています。 この事件から間もなくして、マンチェスター・シティでプレーするベルギー代表のヴァンサン・コンパニ選手は、「ああいった人種差別主義者には、選手側も非寛容な態度でのぞむべきではないか? あいつらに知らしめる必要があると思う。ミランの行動に敬意を表したい」とツイートし、ボアテング選手らの行動を支持しましたが、試合中のファンによる差別的な行為はこの10年のヨーロッパサッカーにおいて日常茶飯事となっているのも事実です。 2006年には当時バルセロナでプレーしていたカメルーン代表のサミュエル・エトーが試合中に人種差別的なヤジをファンから受け、ピッチを離れようとしましたが、チームメイトに説得されて試合に戻っています。2011年にはロシア・リーグでプレーしていた元ブラジル代表のロベルト・カルロスが試合中にバナナを投げつけられる事件もありました。