「生きた化石」脊椎動物の1位はガーと判明、しかも「ヒトとキツネザル以上」離れても繁殖
「ゴミのような魚」が人類を救う?
科学者たちは、ガーが私たち人間の健康に恩恵をもたらすかもしれないと考えている。ガーの進化が遅いのは、ほかの生物に比べてDNAの修復機構が効率よく働いているためと考えられるからだ。 「DNAを何度も複製していると、複製ミスが生じます」とデビッド氏は言う。「生物には突然変異を修正する機構が備わっていますが、修復は完璧ではありません。けれどもガーの修復機構は非常に優れているのです」 デビッド氏は進化の過程を、何万年、何億年にわたって繰り広げられる伝言ゲームにたとえる。ほとんどの生物は、伝言ゲームの途中でミスを重ね、最初にささやかれた言葉は、最終的にまったく違った言葉になっている。けれどもガーに伝言ゲームをさせると、最初の言葉を最後までほとんど変えずに伝えられるのだ。 「どの遺伝子が鍵を握っているのか、目星はついています。その遺伝子を単離できれば、人間の医学や疾患の理解に役立てる方法を考えられるでしょう」とデビッド氏。 例えば、突然変異を修復するガーの遺伝子をヒトの体内で働かせることができれば、がんを予防したり治療したりできるようになるかもしれない。がんとは、DNAの修復がうまくいかず、細胞が際限なく増殖するようになってしまう病気だからだ。 「ガーは長年、不細工で商業的価値がない『ゴミのような魚』と言われてきましたが、私たちの健康にとって非常に価値のある魚かもしれないのです」と、デビッド氏は言う。
文=Jason Bittel/訳=三枝小夜子