「撮影罪」施行から1年も“盗撮被害”は増加の一途…専門家が指摘する「卑劣な犯行」が減らない“根本的要因”
盗撮を軽くみてはいけない2つの理由
そのうえで平松氏は、盗撮を軽くみてはいけない2つの理由をあげる。 「平成27年(2015年)度版犯罪白書には、性犯罪者の類型別再犯率がまとめられています。それによると、盗撮型の再犯率は36.4%。これは、他の犯罪類型に比べ大きい数字といえます。盗撮は性的な“依存症”であるとも言われており、治療が必要とされています。また、盗撮を犯罪として認識せず軽く見ている人がいることも原因のひとつだと思います。しかし、被害者が受ける心の傷はとても大きく、決して許されない犯罪です」
盗撮を減らすために“施設・企業単位”の動きも必要
多くの盗撮現場に足を運び、その実情をリアルに熟知しているだけに、平松氏の指摘は重い。一体どうすれば、盗撮被害を減少に転じさせ、将来的に撲滅へともっていけるのか。 「いくつか思うところはありますが、まずそもそも盗撮が起こらないようにすることが肝要です。そのためは、施設や職場単位で、盗撮に対する意識を高めていくしかありません。いつだれが盗撮をするか分からないというくらいの問題意識を社員に持たせるべきです」(平松氏) 施設や企業が従業員に対し、そこまでする必要があるのかと思えるほど踏み込んだ提言だが、実際に職場での盗撮は、目の前の同僚が机の下からなにくわぬ顔をして、仕込んだ盗撮用カメラで、下着等の撮影をするケースも少なくないという。更衣室やトイレなども、危険ゾーンであり、異変を感じたらすぐに上司などへ報告する体制を構築しておくことは、対策として有効という。 全盗防ネットでも、施設や企業に対し、盗撮対策に取り組んでいる組織を認定するマーク等の発行を検討している。これらについて、前向きな企業がある一方で、打診レベルでは、自社に盗撮があることを認めていると捉えかねられない等の危惧から、賛同が得づらい状況という。しかし、撮影法改正のタイミングで、状況によってはそうした企業に対するアクションが義務付けられる可能性もゼロではない。 「正直、あまりに盗撮が多すぎで、私どもも業務が追い付かないのが実状です。盗撮ツールとなる機器の進化、撮影データの裏の流通ルート発達、盗撮犯罪に対する警察対応の手ぬるさ…。本当に厳しい状況ですが、盗撮に対する検挙を強化し、被害者に対して円滑な支援ができるような仕組みづくりだけは優先的に実現してほしい。それがせめても願いです」(平松氏)
弁護士JP編集部