<参院選>教科書検定「近隣諸国条項」って何?
参議院選挙に向けた自民党の公約の中に、今後周辺アジア諸国との間で波紋を呼びそうな政策があります。公約の付属文書である政策集に盛り込まれた、教科書検定制度の「近隣諸国条項」の見直しです。 「近隣諸国条項」とは、近隣のアジア諸国との間の近現代の歴史的事象に関する記述などには十分な配慮を行うというものです。 この条項を見直すことについては、教科書検定の見直しを検討してきた自民党の教育再生実行本部が6月25日に安倍晋三首相に提出した中間報告にも盛り込まれています。その理由の一つが、教科書に「自虐史観」にとらわれた記述が存在するため、ということでした。
「侵略」書き換え騒動がきっかけ
教科書の記述に影響力を持つこの近隣諸国条項が設けられたのは、1981年度の教科書検定の後でした。このときは、旧日本軍の中国「侵略」が「進出」に書き換えられたと誤って報道されたことから、中華人民共和国・大韓民国が抗議して外交問題に発展し、その沈静化のためもあって検定基準が改定されました しかし、読売新聞社説(6/27付)は、「条項が直接適用されたのは、(中略)わずかなケースに限られる。2000年度以降は1件もない。」と伝えており、実際にはこの条項がほとんど適用されていないと述べています。 それは逆にいえば、時に「自虐的」表現を用いることで、日本の教科書が周辺諸国の反発を買わないよう配慮してきたためだということもできます。同社説は、「近隣諸国条項によって中国や韓国に配慮するあまり、偏った教科書の記述が是正されにくい」と指摘する一部の識者の意見も紹介しています。
首相が教科書検定見直しに意欲
安倍首相は4月に国会で「愛国心、郷土愛を書いた改正教育基本法の精神が生かされていなかった」と述べ、教科書検定制度の見直しに意欲を示してきました。前述の中間報告も同じ問題意識に基づいているものと見られています。 見直しの時期や具体的方針は今後の検討課題とされていますが、すでに周辺諸国から反発の声も上がっています。 たとえば先の中間報告の中では、近現代史で学説が定まっていない事項については確定的な記述をしないよう、検定基準に規定すべきだとも求めています。こうした動きに対し韓国の中央日報日本語版は、すでに5月18日付の記事で、「自国に不利な過去の歴史を『確定していない事実』と規定し、教科書本文から除外する方法で歴史歪曲をするのが自民党の狙いだ」という記事を掲載しています。