『I could be free』は原田知世の自信と確かなキャリアの積み重ねを感じる佳作
OKMusicで好評連載中の『これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!』のアーカイブス。今週は原田知世のオリジナルアルバムの中から、“歌手・原田知世”の代表作と言っていい『I could be free』を取り上げる。アイドルから本格派シンガーへ転身した後の作品として、今聴いても、まさしく自由な精神が表れた佳作である。 ※本稿は2019年に掲載
時代毎に示す確かな存在感
原田知世だが、デビュー以来、ずっと日本のエンタテインメントのメインストリームに居続けている…という感じではないけれども、節目々々でとても印象的な仕事を我々の元に届けてくれる、何とも不思議なポジションにいるアーティストだと思う。また、それは歌手と女優というふたつの顔を持っているからであろうが、忘れた頃にやって来る…というのとは違って、付かず離れずとでも言うべき絶妙なタイミングでメインストリームに顔を出す。少なくとも私にはそんな印象がある。 1980年前半に一世を風靡した、言わば“角川映画アイドル女優期”から始まって、1980年後半には主演映画『私をスキーに連れてって』が大ヒットしてスキーブームを牽引。その後、1990年代からは鈴木慶一やTore Johanssonらのプロデュースのもと、数々のオリジナル音源を制作して、シンガーとしての活動を本格化。2007年には高橋幸宏が中心となって結成されたバンド“pupa”に参加した。2017年にはセルフカバーアルバムの発売やアニバーサリーツアーを開催して、自身のデビュー35周年を華々しく祝ったことも記憶に新しい。昨今はドラマで母親役を演じることも多く、女優としての新境地を築きつつある中で、また主演ドラマである“あな番”がヒット。ザッと彼女のキャリアを振り返っただけでも、10代、20代、30代、40代、50代と、しっかりとその存在感を示す作品を制作してきた。しかも、それぞれの時代でそのスタイルが異なっているのは何気にすごいことではないかと思う。 15年ほど前、原田知世にインタビューさせてもらった時、“微妙なところで微妙な出会いがあるんですよ。それによって知らず知らずに助けられてきたんだなって思います”と彼女が言っていたことを思い出す。運が良い人であるのだろうが、運も実力のうちとはよく言われる。彼女の天賦の才が人との出会いも引き寄せているのであろう。