「月の儲けは15万」日本の図書館の雑誌から無断転載し、化粧品を転売… 「中国人転売ヤー」のリアルな日常
リサーチも販売もSNSで
アカウント開設から1ヶ月ほどを経て、フォロワーが500人を超えた時点で彼女は初めてのライブコマースを行った。80人ほどの視聴者から、オペラ・リップティントや美容液など約30点の注文が入った。 ライブコマースを始めた当初、彼女は深夜の通販番組のように、商品の魅力を誇張して伝える配信を心がけていた。大袈裟な言葉で商品を褒めちぎればちぎるほど、注文が入った。しかし、巧言を弄して得た注文は、キャンセルも多かった。配信を見た後に、注文者が冷静になってその商品に関するネット上のレビューなどを見て、購入をキャンセルするのだ。また、フォロワーの定着率の悪さも課題だった。配信時の大袈裟な言葉に乗せられて購入した視聴者は、実際に商品を使用し、期待以下のクオリティだと、配信者に裏切られた気持ちになってフォローを解除してしまうからである。実際、今のゆるゆるした配信スタイルに変えてから、注文後のキャンセルは半分に減り、フォロワー数も順調に伸び、アカウント開設から1年で4000人に達した。このアカウントだけで、月に15万円ほどの収入を得られている。
日本企業からのオファー
そんな彼女の元に、とあるPR会社から連絡が来た。内容は、ある日本のメーカーの美容マッサージ機を、小紅書のアカウントで販売してほしいというものだった。売上の3割が彼女に支払われるという条件だ。結果、彼女は合計3回の生配信で15点を売り上げ、約8万円を手にした。収入としてはたいしたことのない金額だ。しかし、転売ヤーとしてスタートして3年足らずで、正規メーカーから仕事の依頼を受けるようになったことに、彼女は一種の充足感を得た。 このように、実は日本企業もライブコマースを通した中国市場へのアプローチを活発化させている。そこで使われるのが中国のインフルエンサーだ。 例えば北海道土産の定番、「白い恋人」で知られる石屋製菓は、人流の停滞によって売れ行きが低迷していたパンデミックの中、中国でKOL(キー・オピニオン・リーダー)と呼ばれるインフルエンサーを用いたライブコマースを活発化させていた。 中国のライブコマース界の代表人物として知られるのが、リー・ジアチーだ。2017年にいち早くライブコマースの配信者として活動をはじめた彼は、立板に水のようなセールストークと中性的なルックスで人気を博し、2018年には1万5000本の口紅を5分で売ったことから「口紅王子」の愛称が付けられた。石屋製菓が中国でのライブコマースに起用したのも、リーだ。2022年1月の配信では、1分30秒で白い恋人10万箱を即売し、その売り上げは1億円に達している。