娘の名誉回復とストーカー事件撲滅を目指し、講演続ける父 報道被害「消えない」 桶川ストーカー殺人25年 遺族と記者、それぞれの使命
憲一さんも「報道で娘の名誉はずたずたにされた」と話す。詩織さんが通った大学の学生からは「祖父母から『悪い子が通う大学なのでは』と言われた」と聞く。「誰もテレビや新聞がうそを流すとは思わない。一度貼られたレッテルはずっと消えない」。詩織さんの名誉回復とストーカー事件撲滅を目指し、憲一さんが各地の警察官らを対象に行う講演は120回を超えた。 事件から25年を迎えても、憲一さんに「区切りという感覚はない」。ある講演では、通常開かない扉が勝手に開き「詩織が聞きに来た」と感じた。「娘を殺された親として、ストーカー事件が起きないよう活動するのが使命。事件が起きそうな時には、隠すのではなく、警察や家族、友人、行政、弁護士などさまざまな人に相談してほしい」と話し、講演の時などに身に着ける詩織さんから贈られたネクタイピンをそっとなでた。 ◇ 桶川ストーカー殺人事件 1999年10月26日、JR桶川駅前で大学生の猪野詩織さん=当時(21)=が、元交際相手の男のグループに刃物で刺されて殺害された。上尾署がストーカー被害の相談を放置し、書類改ざんなどの捜査怠慢も発覚した。元交際相手の男は自殺し、犯行に関わった他の男らは実刑判決を受けた。遺族は県(県警)に国賠訴訟を起こし、550万円の賠償が命じられたが、殺人と捜査怠慢の因果関係は認められなかった。事件をきっかけに「ストーカー規制法」が2000年に成立、施行された。